[II-PD06-4] 当院における、大動脈弁狭窄を伴う左心低形成症候群の胎児診断症例の検討 ―大動脈弁狭窄の胎児治療にむけて―
Keywords:大動脈弁狭窄, 左心低形成症候群, 胎児治療
【背景】重症大動脈弁狭窄は胎児期に左心低形成症候群に進行することが知られている。重症大動脈弁狭窄に対し胎児治療を行うことにより、左心低形成症候群への進行を防げることが報告されている。【目的】胎児治療に向けて、重症大動脈弁狭窄の至適胎児診断時期を検討すること。【方法】2010年から2019年までの10年間に当院にて胎児診断され左心低形成症候群として出生後加療された症例のうち、僧房弁狭窄・大動脈弁狭窄/閉鎖であり、初診時に心内膜輝度亢進および左室収縮低下を認めた12例について、その診断時期および胎児期の変化、出生後の予後を後方視的に検討した。【結果】12例のうち、初診時から左心低形成症候群と診断された8例の診断時期は在胎25-33週 (中央値31週) であったのに対し、初診時に重症大動脈弁狭窄と診断され、胎児期に左心低形成症候群に進行した4例の診断時期は在胎22-30週 (中央値25週) とより早期であった。重症大動脈弁狭窄と胎児診断された4例は、診断から2-5週後には左室長径または短径がZ<-2.5となり胎児治療の適応を満たさなくなった。12症例全体の検討で、妊娠日数Xと左室長径Z値Yの関係はY=-0.053X+7.09 (R2=0.30)、妊娠日数Xと左室短径Z値Yの関係はY=-0.055X+8.16 (R2=0.39)であり、それぞれがZ=-2となるのは在胎24週5日、26週4日であった。予後については、積極的に治療された9例の生存率は67% (6/9) であった。【考察】本疾患群に対し有効な胎児治療を行うためには、妊娠30週までに胎児診断を行い、診断後すみやかに胎児診断を計画する必要がある。日本胎児心臓病学会では在胎20週前後と30週での胎児心臓スクリーニングを提唱しているが、初回のスクリーニングで重症大動脈弁狭窄をスクリーニングできるよう、左室拡大や収縮低下、僧帽弁逆流の存在などの所見の重要性を啓蒙する必要があると考える。