第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

優秀演題

フォンタン循環

優秀演題09(III-OEP09)
フォンタン循環破綻

2020年11月24日(火) 10:30 〜 11:00 Track1

座長:大内 秀雄(国立循環器病研究センター 小児循環器科成人先天性心疾患科)
座長:中野 俊秀(福岡市立こども病院 心臓血管外科)

[III-OEP09-3] フォンタン術後プラスチック気管支炎6例の臨床像

小永井 奈緒1,3, 大内 秀雄1, 三宅 啓1, 帆足 孝也2, 市川 肇2, 黒嵜 健一1 (1.国立循環器病研究センター 小児循環器内科, 2.国立循環器病研究センター 小児心臓外科, 3.熊本大学大学院 医学教育部 循環器先進医療学分野)

キーワード:プラスチック気管支炎, フォンタン手術, フォンタン術後合併症

【背景】鋳型気管支炎 (plastic bronchitis; PB) はフォンタン術後に発症する稀な合併症であり、その臨床像は不明な点が多い。【目的】フォンタン術後PB合併患者の臨床像を調べること。【方法】1979年10月から2019年10月の間に当院でフォンタン手術を受けた患者500例について後方視的に観察し、PB合併例を抽出して患者背景を調べた。血液検査値と血行動態指標について、PB発症前後の値を比較検討した。【結果】500例中6例 (男性4例、女性2例) (1.2%) がPBを発症した。基礎心疾患は単心室 3例、両大血管右室起始 2例、エプスタイン病 1例で、主心室は右室型 4例、左室型 2例、フォンタン術式は心房内導管法 2例、心外導管法 4例であった。フォンタン手術到達年齢は中央値 1.5 歳 (範囲 1.1-3.6歳)、PB発症時年齢 6.2 歳 (2.4-8.3歳)、フォンタン手術からPB発症までの期間 4.0 年 (1.1-6.5 年) であった。1例 (17%) は気管支閉塞のため心肺蘇生、人工呼吸器管理が必要であった。5例 (83%) でステロイド吸入治療が行われ、3例 (50%) でカテーテルインターベンション(体肺側副血管塞栓術 2例、上大静脈狭窄へのバルーン拡大術 1例) が行われた。蛋白漏出性胃腸症合併例はなく、いずれの症例もPB発症前NYHA機能分類IまたはIIであった。PBによる死亡例はなかった。3例 (50%) が退院後にPBを再発し、このうち2例に気管支喘息の既往があった。PB発症前安定期 (中央値 1.8年前) とPB発症後安定期 (1.3年後) では、中心静脈圧、肺動脈楔入圧、心拍出係数、動脈血酸素飽和度、BNP、ANPいずれも有意な変化は見られなかった。【結論】フォンタン術後患者の1.2%にPBを合併し、発症時期はフォンタン術後比較的早期であった。6例中1例は人工呼吸器管理が必要であったが、PBによる死亡例はなかった。PB発症前後安定期で比較すると心不全マーカーや血行動態学的指標に有意な変化は見られなかった。