第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

パネルディスカッション

フォンタン循環

パネルディスカッション08(III-PD08)
フォンタン循環破綻

2020年11月24日(火) 08:30 〜 10:30 Track1

座長:大内 秀雄(国立循環器病研究センター 小児循環器科成人先天性心疾患科)
座長:中野 俊秀(福岡市立こども病院 心臓血管外科)

[III-PD08-4] 蛋白漏出性胃腸症とフォンタン循環破綻

安河内 聰 (長野県立こども病院 循環器センター)

キーワード:蛋白漏出性胃腸症, フォンタン循環, リンパ異常

蛋白漏出性胃腸症(PLE)は、フォンタン術後患者の3~12%程度に合併する消化管腔への異常な血清タンパクの漏出による低蛋白血症として定義される重篤な疾患である。発症機転としては、1.低心拍出量、2.中心静脈圧上昇、3.腸管循環血管抵抗上昇、4.高リンパ圧症を伴う腸管リンパシステムの異常, 5. TNFα-などのサイトカインによる炎症、6.腸管粘膜腸管壁(基底膜)異常などがあげられている。 PLE自体は、フォンタン循環に特有の合併症というわけではなく、収縮性心外膜炎や炎症性消化管疾患などでも発生する。今までのフォンタン循環指標とPLEの発症に関する報告では、高CVPによるリンパ灌流圧の上昇とリンパ管からのleakageという機序以外に低心拍出に関連したサイトカインによる腸管リンパシステム障害と腸管壁の損傷によるリンパ漏、リンパ管の閉塞の関連が報告されている。 腸間動脈血管抵抗の上昇に対してsildenafilが有効とする報告もある。われわれの14例のフォンタン術後のPLE症例でも、平均静脈圧は高くなく、心拍出量は平均2.7であった。治療については、1.アルブミン補充、2.γグロブリン補充(特にハイゼントラ)などの補充療法に加え、3.低心拍出と中心静脈圧上昇に対する肺血管拡張薬、4.ヘパリン、5.サイトカインによる炎症に対するステロイド治療(プレドニン/ブデソニド)、6.リンパ漏等に対するリンパ管カテーテル治療、7.血行動態改善のためのカテーテル治療(コイル塞栓、肺動脈狭窄や遺残大動脈縮窄に対するバルーン拡大)などが報告されている。PLEを合併したFontan術後患者の管理は、循環のみならず全身の栄養や感染管理、ステロイドなどの副作用管理など統合的な全身管理が必要である。