[III-S09-3] 先天性心疾患の成人期移行医療の実際:埼玉医科大学国際医療センター
当院では外来予約されている患者は必ず診療しなければいけないことになっているため、小児循環器医が心臓内科(=循環器内科)の外来に予約を取ると診療科が移行することになる。小児科側の希望で移行医療が行われる。しかしながら、一般に循環器内科は最も多忙な診療科といっても過言ではない。先天性心疾患は他の心疾患に比べて症例が少なく、病態が多様かつ複雑であるため、これを専門とする循環器内科医は限られる。急性冠疾患の緊急治療や、不整脈カテーテル治療を専門とする内科医で、先天性心疾患診療に興味があるものは少なく、心エコー図を専門とする医師が成人先天性心疾患の診療を担当することが多い。先天性心疾患に興味と知識がある一部の循環器内科医が外来診療を担当するため、少数の外来に患者が集中することになる。特に、当院は埼玉県西部のごく少ない3次医療機関のひとつであり、紹介患者を多く引き受けている。そのため、病院連携が十分に進められており、安定した患者は近隣の医療機関に通院し、当院へは半年から1年程度の間隔で来院することになる。 合併症のない心房中隔欠損閉鎖術後例を外来で経過観察することはなく、シャント量の少ない心室中隔欠損(VSD)も外来に通院する必要性は低い。感染性心内膜炎に関する注意点を教育し、受診が必要な状況を患者が理解していれば、通院の必要はない。室上稜上部型VSDに合併する大動脈弁逆流(AR)であっても、成人のARは卑近な病態であり、逆流が高度にならない限り頻回の外来通院が必要とはみなされない。心不全・心室収縮機能障害合併例の急性期治療、手術時期の近い弁膜症合併例、不整脈薬物治療導入に加えて、TCPC conversionを待つ症例などが私の外来で定期的な治療を続けている。小児循環器医と循環器内科医は診療に関する考え方に多少の差異があるため、お互いの立場を尊重しながら、移行医療を進めていく必要がある。