第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

胎児心臓病学

デジタルオーラル(I)03(OR03)
胎児心臓病学

指定討論者:田中 靖彦(静岡県立こども病院)
指定討論者:石井 徹子(千葉県こども病院 循環器科)

[OR03-1] 重複大動脈弓の抽出は、右大動脈弓と第一分枝の角度測定が有用である

森 雅啓, 石井 陽一郎, 橋本 和久, 廣瀬 将樹, 松尾 久実代, 青木 寿明, 高橋 邦彦, 萱谷 太 (大阪母子医療センター 小児循環器科)

キーワード:重複大動脈弓, 右大動脈弓, DAA

【はじめに】胎児心エコーの発展により、重複大動脈弓(DAA)が胎児期に診断される例が増えてきている一方で、一側大動脈弓の部分閉鎖を示す不完全型重複大動脈弓(iDAA)は、鏡像的分枝を有する右大動脈弓(中川分類M型)と形態が類似しているため、胎児期での診断が困難であり、出生後の造影CT検査や手術所見で判明することも稀ではない。
【目的】DAA(iDAA)と中川分類M型の右大動脈弓(RAA)の特徴を考察し、胎児心エコーでの診断方法について検討する。
【方法】対象は2010年1月から2019年11月の間、当院でDAA、iDAA、RAAと診断した症例。DAA・血管輪が形成する血管間距離/上行大動脈-下行大動脈の距離(DV length)、右大動脈弓と第一分枝の角度(RF angle)、血管輪を形成している位置の気管径について、保存された胎児心エコー画像で後方視的に計測し、Wilcoxon の順位和検定を用いて統計学的解析を行った。
【結果】症例はDAA7例(iDAA3例)、RAA4例の計11例であった。iDAAは胎児期では全例血管輪と診断されており、出生後の呼吸障害の精査時にiDAAと診断された。DV lengthはDAA:0.46-0.83、RAA:0.42-0.77 (p=n.s)、 気管径はDAA:2.4-4.8mm、RAA:3.3-4.6mm (p=n.s) と共に有意差を認めなかったが、RF angleはDAA:32-63度、RAA :76-89度 (p<0.01) とDAAで全例70度未満であり有意に急峻であった。
【考察】今回の鑑別方法は診断が難しいiDAAも診断ができる。RAAと異なり、DAAは第一分枝が下行大動脈とつながるため、RFangleが急峻となると思われる。
【結語】胎児心エコーにおいてDAAに加えてRF angleが70度未満であればiDAAである可能性がある。