[OR04-1] 機能的単心室の予後改善へ向けた初期治療介入の工夫
キーワード:共通房室弁, 総肺静脈還流異常, カテーテル治療
【背景】 機能的単心室の生命予後は近年の積極的な治療介入により以前と比較し改善している。しかし共通房室弁や総肺静脈還流異常を有する例は依然として予後不良であり、予後改善のため治療の工夫が求められる。【目的】共通房室弁や総肺静脈還流異常を有する機能的単心室への治療戦略と予後との関連を明確にすること。【対象と方法】1975年から2019年に当院に入院した機能的単心室312例を対象とした。カプランマイヤー法による生存曲線を求め、共通房室弁や総肺静脈還流異常を有する例の生存率の同定や初期介入治療の違いによる比較を行った。結果:性別(男児)は162例(52%)、基礎疾患は内臓錯位が100例(無比症候群77例、多脾症候群23例)、左心低形成症候群 34例、三尖弁閉鎖 43例、純型肺動脈閉鎖 43例、その他単心室が92例であった。Fontan手術到達例は174例(56%)、死亡例は87例(28%)であった。機能的単心室の5年および10年生存率は各々59.1%, 54.9%であった。基礎疾患別の5年生存率は、無脾症候群59.1%、多脾症候群85.7%、左心低形成症候群49.4%、三尖弁閉鎖82.4%,、純型肺動脈閉鎖63.4%、その他単心室90.6%であった。共通房室弁の有無での5年生存率は、76% vs 65%で有意差を認めた(p<0.05)。また心外型の総肺静脈還流異常の有無でも5年生存率に有意差をみとめた(55% vs 76%、p<0.01)。共通房室弁を有する例に初回治療として体肺動脈シャント術を行った場合の5年生存率は74.1 %であった。一方カテーテル治療による肺動脈弁形成術や右心バイパス術を初回治療として選択した場合5年生存率は83.7%と高い傾向を示した。また総肺静脈還流異常に合併した肺静脈狭窄への経皮的ステント治療を5例に施行した。1例が周術期に死亡したが2例はグレン手術に到達した。【結論】共通房室弁や総肺静脈還流異常は機能的単心室の予後不良因子である。予後改善には外科治療だけでなくカテーテル治療の併用など工夫が必要である。