[OR04-2] 全冠動脈孔閉鎖を伴う純型肺動脈閉鎖症に対するAo-RV shuntの新たな治療戦略
キーワード:純型肺動脈閉鎖症, 全冠動脈孔閉鎖, Ao-RV shunt
【背景】PA,IVSは、類洞交通 (SC)を認める事があり、極まれに全冠動脈孔閉鎖 (ACA: aorotocoronary atresia)を伴う。ACA合併のPA,IVSの死亡率は100%と報告される。我々はACAと診断し、BT shunt時に上行大動脈右心室短絡術 (Ao-RV shunt)を施行して救命し得た1例を経験した。【目的】SCのflow patternの変化から本治療法の有用性を報告する。【方法】SC flowとAo-RV shunt flowの経時変化に注視し、パルスドップラー (PW)にてモニタリングしAo-RV shunt術前後、Ao-RV shunt閉塞時、Ao-RV shunt size up後でSC flowとAo-RV shunt flow変化を検討した。【結果】Ao-RV shunt術前のSC flowは収縮期にRV腔から心筋内への順行性血流と、拡張期に心筋からRV腔への逆行性血流を認めた。Ao-RV shunt術後のSC flowは収縮期に順行性血流、拡張早期に逆行性血流を認めたが、拡張末期に順行性血流を認め、2峰性順行性血流となった。Ao-RV shunt内の血流は拡張期にAoからRV腔への順行性血流と、収縮期にRV腔からAoへの逆行性血流を認め、順行性血流優位でsharpな形であった。Ao-RV shunt閉塞時はSC flowの拡張末期の順行性血流は消失し、Ao-RV shuntの血流波形はAoからRV腔への順行性血流のflowは加速しdullな形であった。Ao-RV shunt size up後では、SC flowは2峰性順行性血流へ戻り、Ao-RV shuntの血流波形は順行性血流が優位でsharpな形に戻った。【考察】Ao-RV shuntによってover systemicだったRVの収縮期圧を体血圧まで低下させ、RVの拡張期圧が体血圧の拡張期圧まで上昇した事で冠循環の拡張期順行性血流を生じ、冠血流量を増加させた。また、SCに流れる血液の酸素飽和度の上昇も冠循環の改善に寄与したと考えられる。【結語】PA,IVSのACAの死亡率は100%であり、移植適応となるが、Ao-RV shuntを作成しRVを冠循環の一部とする事で、冠循環を改善させ救命する事ができた。現在TCPCまで到達し元気に生存している。