[OR04-4] 胎児診断のない左心低形成症候群の経過と予後
キーワード:左心低形成症候群, 胎児診断, 予後
<背景>沖縄県の胎児診断率は高くない。最重症である左心低形成症候群(HLHS)も、出生後の経過で搬送される場合が多い。沖縄県内で先天性心疾患(CHD)手術を行う施設は当院のみであり県内全域の広範囲な地域のCHD治療を担っている。<目的・方法>2012年から2020年2月まで当院で治療を受けたHLHSおよびその類縁疾患11例中、非胎児診断であった7例について、当院受診契機から治療経過について報告する。<結果>平均観察期間は52ヶ月。男児が6例。在胎週数は中央値38 (37-40)週、出生体重は中央値2965g(2.6-3.2)kg、当院搬送日齢は6例が日齢1、1例が日齢2だった。搬送契機は6例がチアノーゼ、ductal shock症例が2例だった。7例中2例が死亡し、1例はductal shockでの搬送後、1例は冠動脈起始異常合併が原因であった。経皮的心房中隔裂開術を施行したのは3例(日齢1-2)、初回外科介入は全例両側肺動脈絞扼術(日齢4-11)だった。当院ではNorwood手術時の肺血流確保は症例によって変えている。Norwood到達5例の同時手術はBTシャントが1例、右室-肺動脈導管2例、グレン手術が2例であった。最終経過はフォンタンが4例(57%)、グレン到達が1例である。一方、胎児診断された4例は、ductal shockはなく全例が生存し、グレン到達が2例(1例TCPC待機中)、Norwood到達が1例、1例がNorwood+グレン待機中である。両群間でDuctal shockには差がでたが、フォンタン到達には差は見られなかった。<考察>複雑心奇形における胎児診断の重要性は周知されている。しかし国内の胎児診断率にはまだ地域差が大きい。今回症例は少ないが、県内のHLHS症例のうち、胎児診断の有無で死亡率に有意差はみられなかった。治療施設の集約化による治療方針の画一、県立病院間の連携による搬送時間の短縮などが生存率の増加につながったと考えられた。<結語> HLHSの治療改善には胎児診断率の向上と同時に新生児搬送の迅速さと治療施設の集約化も重要である。