第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

心臓血管機能

デジタルオーラル(I)06(OR06)
心臓血管機能

指定討論者:増谷 聡(埼玉医科大学総合医療センター)
指定討論者:宗内 淳(九州病院 小児科)

[OR06-2] 右室圧から得られる新しい指標 RVωはTei index (MPI)を反映し、ファロー四徴症術後症例における右心不全を評価できる。

早渕 康信, 本間 友佳子, 香美 祥二 (徳島大学病院 小児科)

キーワード:右室機能, Myocardial performance index, ファロー四徴症

【背景と目的】Tei index (Myocardial performance index: MPI)は収縮能と拡張能を合わせた総合的指標であり、予後予測に有用である。しかし、誤差を生じやすい・偽正常化する・弁膜症の有無に左右されるなどの限界がある。従来、MPIに合致した心臓カテーテル検査指標は示されていないが、我々は簡便で再現性の高い指標RVωを考案した。さらに、ファロー四徴症術後右心不全患者の再手術前後において評価を行い、その有用性を検証した。【方法】右室圧波形を正弦波と類似の動態を示していると捉えると、右室圧波形の振動を示す角速度(ω; rad/s)は、RVω = (dP/dt_max - dP/dt_min)/(Pmax - Pmin)として示される(dP/dt_max, dP/dt_min: dP/dt最大値、最小値, Pmax, Pmin: 右室圧最大値、最小値)。このRVωは、右室における収縮拡張のagility(機敏さ)を示しており、MPIが持つ収縮と拡張の総合的時相解析の意義に一致するものと考えられる。小児心疾患132例におけうパルスドプラ法および組織ドプラ法から求めた右室のPWD-MPIおよびTDI-MPIとRVωの相関などを検討した。また、ファロー四徴症術後右心不全患者11例の再手術前後で評価した。【結果】RVω はPWD-MPIおよびTDI-MPIと有意な負の相関を示した(r = -0.52, -0.51; p<0.0001 both)。また、RVωは、RVFAC, RVEF, E/e’とも有意な相関を示した(r = 0.41, 0.39, -0.19; p<0.01 all)。右心不全を有したファロー四徴症術後症例において、RVωは再手術によって有意に上昇した(19.5±2.7 vs, 23.6±3.4; p<0.01)。【結語】RVω = (dP/dt_max - dP/dt_min)/(Pmax - Pmin) は右室の統合的機能を示し、ファロー四徴症術後症例における右心不全の重症度と治療効果判定に有用であると考えられた。