The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

デジタルオーラル

心臓血管機能

デジタルオーラル(I)06(OR06)
心臓血管機能

指定討論者:増谷 聡(埼玉医科大学総合医療センター)
指定討論者:宗内 淳(九州病院 小児科)

[OR06-5] HLHS予後因子のQRS時間は何を反映しているか?

原 卓也, 石川 友一, 倉岡 彩子, 児玉 祥彦, 中村 真, 佐川 浩一 (福岡市立こども病院)

Keywords:HLHS, QRS, 心筋重量

【背景】HLHSにおいてQRS時間延長(>120ms)は独立した予後不良因子とされるが、そのメカニズムは不明である。【目的】Norwood(N)術後HLHSにおけるQRS時間の持つ病的意義を探索する。【方法】2009~19年に当院で心臓MRIを施行したN術後HLHS症例11 例(0.85歳、M/F=5/6)を対象としQRS時間と血行動態指標の関係を後方視的に比較した。【結果】在胎週数38±1.0, 出生体重2838±382g、解剖診断MS/AS5,MS/AA4,MA/AA2, N術時年齢0.10(0.01, 0.44)歳、MRI時年齢 0.47(0.19, 1.02)歳. QRSd 93±14msec, BNP 290±213pg/ml, 心カテ: RVs/e=76±9.4/7±1.6mmHg, CVP 4.5±1.6mmHg, AAo 77±10.2/34±4.9mmHg, DAo 76±9.7/34±2.9mmHg. MRI: Qp/Qs 1.1±0.3, RVEDVi 125±37ml/m2, RV mass index 86.8±21.4g/m2, RVEF 46±11%, AR 4.4±3.3%, TR 9.4±10.5%、RVEDV/RVmass(V/M比) 1.48±0.26ml/gであった。QRSdがBNP(R=0.46)およびRVEDVi (R=0.72)、V/M比(R=0.74)と有意な正相関を示した一方で、BNPがAR(R=0.45)、Qp/Qs(0.41)、RVEDVi(0.32)と有意な正相関を示した。両者ともRVEFとの相関はなかった。RVEDPはRVEDVi(R=0.06)との相関はなかったが、QRSd(r=0.34)、V/M比(r=0.59)とは相関を示した。【考察】QRSd延長は単純にRV容量負荷を反映するのみならず、RVEDPと相関するV/M比とも強い正相関を示したことから、量的負担に心筋重量(RVのポテンシャル)が適合しきれていない状況を表現している可能性がある。【結論】N術後HLHSにおけるQRSdは容量負荷に対する心筋適応度を反映している可能性がある。心室容積自体はQp/Qsと密接に相関したため、QRSd延長例ではとくにQp/Qsを低値に保つ治療戦略が重要と考えられる。