第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

川崎病・冠動脈・血管

デジタルオーラル(I)23(OR23)
川崎病・冠動脈・血管1

指定討論者:鮎澤 衛(日本大学医学部附属板橋病院 小児科)
指定討論者:深澤 隆治 (日本医科大学付属病院 小児科)

[OR23-1] 冠動脈瘤非形成川崎病既往成人4突然死例の病理学的検討

高橋 啓1, 大原関 利章1, 横内 幸1, 佐藤 若菜1, 浅川 奈々絵1, 林 紀乃2, 浅倉 久美子2 (1.東邦大学 医療センター大橋病院 病理診断科, 2.東京都 監察医務院)

キーワード:川崎病, 冠動脈, 粥状動脈硬化症

冠動脈瘤の形成を認めなかった川崎病既往4成人剖検例について病理組織像を中心に報告したい。症例1:25歳、男性。会社員。4歳時川崎病罹患、15歳にて終診。ランニング中に倒れているのを発見される。組織学的所見:冠動脈は3枝共に全周性線維性内膜肥厚をみるのみで、粥腫は不明瞭で血栓性閉塞も認めない。症例2:34歳、男性。運送業。1歳6か月時川崎病罹患、心後遺症なしにて15歳で終診。夜勤後朝に体調不良を訴え同日夜意識消失。組織学的所見:LADは粥腫を伴う高度の偏心性内膜肥厚により著明狭窄。同部には内膜びらんによる血栓性閉塞をみる。LCXは内膜肥厚のみ。RCAはLADと同様の粥状硬化症により90%狭窄。症例3:39歳、男性。パティシエ。2歳時川崎病罹患、8歳まで経過観察されるも中断。バスルームで嘔吐し倒れているところを発見。組織学的所見:LADは粥状動脈硬化症による偏心性内膜肥厚により約50%狭窄。血栓閉塞像なし。LCX, RCAは全周性内膜肥厚をみるも内腔狭窄はみられない。症例4:42歳、男性。ラーメン店店長。2歳時川崎病罹患、その後の詳細不明。就寝中ベッド上死亡。組織学的所見:LADには粥腫の形成を伴う偏心性内膜肥厚をみるが有意狭窄なし。LCA,RCAには軽度の内膜肥厚をみるのみ。要約:4例はいずれも川崎病冠動脈炎に基づく動脈拡張性変化は乏しかった。粥状動脈硬化症に関すると1例は初期像に相当したものの3例には進行性粥状動脈硬化症が観察された。川崎病血管炎瘢痕は通常全周性内膜肥厚として観察されるのに対し、3例に観察された粥腫の形成を伴う内膜病変は偏心性肥厚であり、粥状動脈硬化症の進展に川崎病血管炎後遺症がどの程度関わっていたかは不明である。しかし、動脈拡張を残さない川崎病既往若年成人のなかに進行した粥状動脈硬化症を伴い、さらには同部の血栓性閉塞が死因に関連する症例の存在が確認された。