第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

外科治療

デジタルオーラル(I)27(OR27)
外科治療2

指定討論者:小田 晋一郎(九州大学大学院 医学研究循環器外科)
指定討論者:小出 昌秋(聖隷浜松病院 心臓血管外科)

[OR27-3] chimney reconstructionを用いたNorwood型再建新大動脈弓の形態学的特性

浅田 聡, 山岸 正明, 板谷 慶一, 前田 吉宣, 藤田 周平, 本宮 久之, 山下 英次郎, 中辻 拡興, 夫 悠 (京都府立医科大学 小児医療センター 小児心臓血管外科)

キーワード:chimney reconstruction, aortopulmonary space, 左肺動脈圧排

【背景】左心体形成症候群(HLHS)に対するNorwood手術(N術)型新大動脈弓再建において,当施設では補填物を用いずに新大動脈基部の円錐状形成による長軸延長と短径短縮を行うchimney reconstruction(CR)を2013年4月より導入した.従来法と比較し早期中期成績も良好であり,流体力学上の優位性も報告してきた.また本法は新大動脈弓下のAortopulmonary(A-P) spaceの確保も期待されており,今回の研究では後方視的に新大動脈弓形態をCTを用いて従来法と比較検討した.【方法】当施設において2004年5月から2019年12月までN術を行ったHLHSおよびその類縁疾患37例のうち,術後CTを撮像しえた29例を対象とした.N術時の月齢中央値2.1ヶ月(6日-4.9ヶ月),体重中央値3.5kg(2.6-5.8kg)であった.従来法を前期群,CRを後期群とした.術後CTを用いて,新大動脈弓頂部下端から気管分岐部下端までの垂直距離(AH),水平断における新大動脈弁と下行大動脈との距離(AW),新大動脈Valsalva洞径(VD),大動脈弓部平面における新大動脈弓下部面積(AUN)を測定し,体格補正した.また新大動脈基部と弓部との吻合角(AA)も測定した.【結果/考察】前期群12例,後期群17例.前期群/後期群における測定結果は,AHは5.9±7.8/6.5±6.5mm/√m2(p=0.82),AWは29.1±7.6/34.8±5.4 mm/√m2 (p=0.04),VDは32.7±4.7/36.7±5. 6mm/√m2(p=0.05), AUNは4.5±1.7/6.0±1.5mm2/m2(p=0.02),AAは101.0±15.6/114.0±14.9度(p=0.03)であった.CRはAWの短縮を抑え,A-P spaceを広く確保できていた.新大動脈基部は長軸方向に延長されることで新大動脈弓とより緩やかな角度で吻合できており,流体力学的特性への寄与が示唆された.VDに関しては,短期的には有意な縮小変形とはなっていなかった.【結語】CRはA-P space確保という形態学的特性も獲得しつつも流体力学的優位性を生み出せる有用な術式であった.遠隔期新大動脈拡大の回避が可能かどうかはさらなるフォローアップによる確認が必要である.