第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

外科治療

デジタルオーラル(I)27(OR27)
外科治療2

指定討論者:小田 晋一郎(九州大学大学院 医学研究循環器外科)
指定討論者:小出 昌秋(聖隷浜松病院 心臓血管外科)

[OR27-5] 小児・若年に対するグルタールアルデヒド処理自己心膜を用いた大動脈弁形成術(Ozaki法)の外科成績

山本 隆平, 山田 有希子, 鹿田 文昭, 岡村 達, 竹内 敬昌 (長野県立こども病院 心臓血管外科)

キーワード:大動脈弁形成術, Ozaki法, 自己心膜

【目的】小児・若年の大動脈疾患において,術後の成長やワーファリン内服回避等の理由により,大動脈弁形成術が有用とされ,複数の形成術が報告されている.自己心膜を使用した大動脈弁形成術(Ozaki法)は成人において数多くの手術が行われ,良好な成績を残しているが,小児や若年に対しての報告は限られている.当院で小児・若年にOzaki法を施行した大動脈弁狭窄/逆流症(AS/AR)に対する手術成績を後方視的に検討した.【方法】2010年4月以降,Ozaki法による大動脈弁形成術を行った連続5例を対象とした.手術時年齢中央値17(12-19)歳,体重中央値50.7(33.8-63.4)kg.内訳はAS:2例,AR:1例,ASR:2例.そのうち1例がunicuspid,4例がbicuspid valveであった.その他併存疾患として,1例がTurner症候群,1例がCoAに対し大動脈弓修復術後であった.3例が術前にcatheter interventionを施行されている.術式はOzaki法に準じ自己心膜を0.6%グルタールアルデヒドで10分間処理し,サイザーを用いて弁尖の交連部間の距離を測定し,サイズに合わせて心膜をトリミングし,弁尖を形成した.【結果】術後観察期間中央値は60(4-67)か月.手術時間383(371-450)分,人工心肺時間189(162-196)分,大動脈遮断時間119(105-135)分.4例が術当日,1例が翌日に抜管.ICU滞在期間2(2-5)日,術後在院日数7(5-20)日.周術期および遠隔期の死亡はなし.退院時,3例にtrivial ARを認め,そのうち2例は消失.大動脈弁上の連続波ドプラ法による最高血流速度中央値は1.6(1.2-2.8)m/sでASの所見は認めず.観察期間に再手術やカテーテルによる介入は行われなかった.【結論】当院で施行された5症例において,狭窄及び逆流は改善を得ており,術後の短期・中期成績は満足しうる結果で,Ozaki法による大動脈弁形成術は小児・若年に対しても有用な方法と示唆される.しかしながら本検討は短期・中期成績を検討したもので,成長に伴う弁機能の変化も含め,長期的な評価が必要で,慎重な観察が必要である.