第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

外科治療

デジタルオーラル(I)28(OR28)
外科治療3

指定討論者:小沼 武司(三重大学医学部大学院医学系研究科 胸部心臓血管外科)
指定討論者:櫻井 一(中京病院 心臓血管外科)

[OR28-4] 右肺無形成及び低形成例を伴うPA slingと気管狭窄の治療における問題点

和田 侑星, 大嶋 義博, 松久 弘典, 日隈 智憲, 松島 峻介, 長谷川 翔太 (兵庫県立こども病院 心臓血管外科)

キーワード:pulmonary artery sling, 先天性気管狭窄, 右肺低形成

【目的】PA slingと気管狭窄合併例の大動脈弓による気管への影響,左肺動脈(LPA)の解剖学的問題点についてCT画像を用いて検討した.【対象と方法】2010年から2019年までの間にPA sling,気管狭窄と診断し手術を施行した38例をI群:右肺正常例( 21例 ),II群:右肺低形成例( 12例 ),III群:右肺無形成例( 5例 )に分けた.(1) CT水平断画像の気管分岐部レベルで上行大動脈と下行大動脈の中心点同士を結んだ線( a線 )と気管の位置関係を,タイプA:気管がa線の前方,タイプM:気管がa線上,タイプP:気管がa線後方の3つに分け術後気管に対するarchの圧排について検討した.(2) PA sling修復におけるLPAの受動性について,左肺門からLPA起始部までの長さ(x)と肺門部からLPA移植想定部までの距離(y)の比(x/y)を比較検討した.【結果】(1) 右肺低形成に伴い,縦隔および上行大動脈は右背側に偏位するため大動脈弓が気管を背側に圧排する.I群の4例とII群の7例はタイプMで,大動脈弓背側での気管形成3例(I群1例,II群2例)で気管軟化に対する大動脈吊り上げを要した.II群の4例とIII群全例がタイプAで,4例は気管を大動脈弓の前方で再建した(LPA転位術なし)が,大動脈弓背側で再建した5例全例で気管軟化に対し大動脈弓吊り上げを要した.(2) I群におけるx/y値1.27 [0.98-2.11]に対し,II群におけるx/y値は0.82 [0.56-0.96]と有意にLPAは短く(P<0.0001),2例にMPAフラップによるLPA延長術を行った.また,気管形成術により,頭側に吊り上がった左気管支によるLPA圧排をI群の2例,II群の3例に認め,4例で術中に,1例で術後3日目にLPAの追加剥離を行った.【結語】右肺無形性を合併したPA sling,気管狭窄では気管圧迫回避の為に大動脈弓前方での再建が妥当である.右肺低形成例は解剖学的に最も複雑で,形態に応じて大動脈弓前後での再建および吊り上げの付加,PA sling修復においては短いLPAへの対応を要する.