[OR30-5] 小児僧帽弁閉鎖不全に対する人工腱索を用いた僧帽弁形成術の手術成績
キーワード:僧帽弁閉鎖不全, 人工腱索, 遠隔期成績
【目的】僧帽弁閉鎖不全症(MR)における僧帽弁形成術は,左室機能,ワーファリン回避,遠隔期予後,感染性心内膜炎などの合併症において僧帽弁置換術より優位であることが示されている。我々は以前よりexpander polytetrafluoroethylene suture(ePTFE)を人工腱索として用いた形成術を行っており,今回はその治療成績について検討した。【方法】1995年8月から2019年11月までにMRに対して人工腱索を使用した弁形成術を行った18歳以下の94例を対象とした。手術時年齢は6.8歳(生後40日-13歳)、術後観察期間は7.9年(最長19年),手術時体重は17.0kg(2.5-31.4kg)であった。【結果】術前のMRの程度はmoderate以上が76例(80.8%)であり,Carpentier Type2が84例(89%)、Type3が10例(11%)であった。用いた人工腱索は65例(69%)で1本,28例(30%)で2本,1例で3本であり,前尖のみに立てたものが88例(92%)であった。また全例で弁輪縫縮を施行した。周術期および遠隔期死亡はRoss-Konnoを同時に行った1例のみであった。僧帽弁再手術回避率は術後19年で91.4%であった。また、僧帽弁形成術後の中等度以上MR 再発回避率は10年で89.2%であった。Carpentier Type3はType2と比べ有意に僧帽弁に対する再手術を要した(p<0.05)。1歳以下での初回手術介入(p=0.02)は再手術介入のリスクであった(p=0.04)。7例に対して僧帽弁への再手術介入を行った(形成術3例,弁置換術4例)。人工弁再手術例4例を除いた術後遠隔期心エコー検査によるMRの評価は,逆流なし 19例(21%),軽度以下 69例(77%),中等度以上 2例(2%)であった。左室流入速度は、1.74m/sであった。【結果】小児MRに対するePTFE sutureを用いた僧帽弁形成術の遠隔成績は良好であった。一方でCarpentier Type3症例は、再手術介入のリスクがあり、継続的・長期的なフォローアップが必要である。