第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

一般心臓病学

デジタルオーラル(II)05(P05)
一般心臓病学5

指定討論者:大野 拓郎(大分県立病院 小児科)

[P05-1] 新生児期Mustard手術を行った孤立性心室逆位の1例

三浦 文武, 前田 佳真, 小林 匠, 吉敷 香菜子, 稲毛 章郎, 浜道 裕二, 上田 知実, 矢崎 諭, 嘉川 忠博 (榊原記念病院 小児循環器科)

キーワード:孤立性心室逆位, Mustard, 多脾症

孤立性心室逆位は心房と心室の関係が不一致(atrioventricular discordance)で、心室と大血管の関係は正常(ventriculoarterial concordance)である稀な疾患である。治療方針については一定の見解がなく、新生児期に心房内血流転換術を行った例は少ない。孤立性心室逆位に新生児期Mustard手術を行った一例を経験した。
症例は女児。在胎40週4日に自然分娩で出生した。出生体重3505g。出生後に低酸素血症を認めた。前医で孤立性心室逆位を疑われ、日齢2に当科へ搬送になった。CTと超音波検査で左上大静脈と肝静脈は左側心房へ流入し、肺静脈は右側心房へと流入していた。また多脾症だった。新生児期の心房内血流転換術はハイリスクである一方、経皮的心房中隔裂開術は下大静脈欠損のため困難だった。一時、動脈管の開存と肺血管抵抗低下に伴う肺血流増加によって徐々に心不全が顕在化したが、その後は動脈管の閉鎖とともに逆に低酸素血症が進行し、酸素化の維持が困難になった。そのため日齢7にASD creationを行い、心房間を大きく開大させた。しかしその後も超音波検査で肺静脈血流は三尖弁方向へ、左上大静脈血流は僧帽弁方向へ流入してしまい、心房間のmixingは依然不良だった。内科的治療では酸素化の維持が困難であり、日齢17にMustard手術を行った。術後急性期は上室性不整脈を認めたが、その後の経過は比較的良好で目立った体静脈狭窄と肺静脈狭窄は認めず経過した。過去の報告例も考察しつつ、本症例の臨床経過を報告する。