第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

一般心臓病学

デジタルオーラル(II)05(P05)
一般心臓病学5

指定討論者:大野 拓郎(大分県立病院 小児科)

[P05-4] 小児血液・腫瘍系疾患に併発する心内合併症の実際-小児循環器分野のOnco-Cardiology-

平田 悠一郎, 岩屋 悠生, 小林 優, 江口 祥美, 豊村 大亮, 福岡 将治, 鵜池 清, 長友 雄作, 永田 弾, 山村 健一郎, 大賀 正一 (九州大学病院 小児科)

キーワード:Onco-Cardiology, 血液・腫瘍系疾患, 心内合併症

【背景】血液・腫瘍系疾患の診療において、循環器系の副作用や合併症は大きな問題となる。副作用によって化学療法を中断すればがん患者の生命予後やQOLは著しく損なわれ、またがんに伴う易血栓形成傾向は肺塞栓症など重篤な循環器疾患のリスクとなる。近年、欧米ではOnco-Cardiologyという新たな学際領域が生まれ、循環器医と血液・腫瘍医との診療連携体制整備が急速に進められている。一方、我が国ではようやくその重要性が認識され、成人領域での萌芽的な取り組みが始まったばかりである。
【目的】小児血液・腫瘍患者に併発した心内合併症を調査し、小児循環器分野におけるOnco-Cardiologyの重要性を検討する。
【方法】直近10年間の当院の小児血液・腫瘍患者の診療録から、心内合併症を生じた症例を抽出・検討した。
【結果】4例の小児血液・腫瘍患者に心内合併症が生じ、小児循環器医が介入していた。<症例1>2歳女児。左腎芽腫。心雑音を契機に腫瘍の右房内進展が見つかった。化学療法で原発巣は縮小したが右房内腫瘍は変化無く、開胸にて切除術を実施した。<症例2>7歳男児。骨髄異形成症候群。非血縁者間骨髄移植を実施後に肝膿瘍を合併し、膿瘍が下大静脈や右房内へ進展した。一部は播種して肺塞栓症を起こし、呼吸不全・多臓器不全のため死亡した。<症例3>11歳男児。Fanconi貧血。非血縁者間骨髄移植を実施後、右房内血栓を認めた。ヘパリン持続投与にて血栓は消失した。<症例4>15歳男児。下肢の疼痛を契機に深部静脈血栓症・多発肺塞栓症と診断され、同時に異常な好酸球増多から急性リンパ性白血病と診断された。寛解導入療法後、左室内血栓を認めた。ヘパリン持続投与にて血栓は縮小傾向であったが、予定していた化学療法は中断した。
【結論】小児血液・腫瘍患者にも循環器系合併症が生じ、小児循環器医の介入が必要な症例が存在する。小児循環器分野でもOnco-Cardiologyは注目に値する領域である。