第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

染色体異常・遺伝子異常

デジタルオーラル(II)08(P08)
染色体異常・遺伝子異常3

指定討論者:前野 泰樹(聖マリア病院)

[P08-5] 先天性の体肺側副血管による喀血を繰り返し、複数回のコイル塞栓を行ったKCNT-1遺伝子変異の男児症例

矢尾板 久雄1, 小澤 晃1, 前原 菜美子1, 高橋 怜1, 木村 正人1, 田中 高志1, 萩野谷 和裕2 (1.宮城県立こども病院 循環器科, 2.宮城県立こども病院 神経科)

キーワード:KCNT1遺伝子変異, 体肺側副血管, 喀血

【背景】KCNT1遺伝子 (Na依存性Kチャネル遺伝子) 変異は遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん (MPSI) 等の難治性てんかん患者に認められる遺伝子変異である。2017年、KCNT1遺伝子変異のあるてんかん患者で、多数の体肺側副血管 (APCAs) を認め心不全・反復性喀血を伴う症例が報告されたが、それ以後の報告はない。我々の施設でも、多数のAPCAsにより喀血を繰り返すKCNT1遺伝子変異の患児に対し、複数回のコイル塞栓を行っている経験があり、報告する。【症例】症例は2歳男児。生後1週目から、上肢の屈曲・眼振・口を動かす動作が出現。新生児痙攣として生後1ヵ月で宮城県立子ども病院神経科紹介入院となり、精査の結果、早期乳児けいれん性脳症と診断された。入院中、心雑音を指摘され心エコーを行った所、軽度の左室拡大に加え、両鎖骨下動脈を中心に多数の側副血管(APCAs)を認めた。生後7ヵ月に喀血を起こし当院受診。生後8ヵ月でカテーテルによるコイル塞栓を行った。その後も喀血を繰り返し、これまでで6回のカテーテル治療を繰り返している。APCAsに加え、てんかんについては遊走性焦点発作を伴う乳児てんかんの特徴も持つことからKCNT1変異が疑われた。全ゲノム解析の結果、同診断が確定した。【結語】難治性てんかんにAPCAsを認め、喀血を繰り返すKCNT1遺伝子変異の1例を経験した。喀血に対しコイル治療を継続していくが、臨床経過やこれまでの症例報告からも、今後も喀血を繰り返していくことが予測され、厳しい予後が予想される。しかし、未だ報告例は少ない為、正確な予後予測は困難で今後の症例の蓄積が期待される。