[P20-5] 層別ストレイン解析を用いた小児から若年成人までの炎症性腸疾患患者の左室機能評価
キーワード:炎症性腸疾患, 層別ストレイン, 心機能
【背景】炎症性腸疾患(IBD)の患者は近年世界的に増加傾向にあり、そのうち小児期発症は15-25%である。慢性的な全身炎症や代謝変化、治療の影響からIBDが心血管疾患のリスク因子であることが注目され、心不全の発症リスクも高い。30歳以上の成人領域においては心機能低下の報告も散見される。しかしながら小児から若年成人のIBD患者の心機能低下について詳細な報告は存在せずその発症時期も不明である。【目的】小児期発症のIBD患者の左室機能を鋭敏な心機能検査法である層別ストレイン法を用いて検討し、心機能の低下の有無を検討すること。【方法】対象は潰瘍性大腸炎13例およびCrohn病4例の合計17例のIBD群(発症時年齢11.8歳:4.7-14.5歳、検査時年齢17.6歳:10.9-23.7歳)、正常群17例(中央値18.1歳:10.9-23.8歳)。心臓超音波で傍胸骨短軸像の心基部、乳頭筋部、心尖部レベルの円周方向ストレイン(CS)および心尖部四腔断面像の長軸方向ストレイン(LS)を、それぞれ内層・中層・外層ごとにスペックルトラッキング法を用いて計測し比較検討した。【結果】IBD群は正常群と比較して心基部の内層CS(-21.5±4.6%vs-25.7±2.4% P<0.001)中層CS(-15.7±3.1%vs-18.4±2.1% P<0.001)および外層CS(-10.9±2.1%vs-12.6±2.3% P<0.001)全てが、乳頭筋部は内層CS(-22.5±7.0%vs-25.8±2.9% P<0.001)および中層CS(-15.6±2.1%vs-17.5±2.6% P<0.001)が、LSは内層(-15.3±2.6%vs-19.1±1.1% P<0.001)中層(-13.9±2.4%vs-17.1±1.0% P<0.001)および外層(-12.8±2.2%vs-15.4±1.0% P<0.001)全てが有意差をもって低下していた。【結語】小児期から若年成人のIBD患者では正常群と比較して心筋変形能が有意に低下していた。現在IBD群において心不全の臨床兆候はないが、今後慎重な経過観察を行う必要が示唆された。これらはIBD群における心機能低下に関する新たな知見である。