第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

カテーテル治療

デジタルオーラル(II)22(P22)
カテーテル治療2

指定討論者:須田 憲治(久留米大学医学部 小児科学講座)

[P22-2] 経皮的肺動脈弁形成術後の稀な合併症:肺水腫を呈した未修復Fallot四徴症の乳児例

清松 光貴1,3, 鍵山 慶之1,3, 家村 素史1,3, 安永 弘2, 須田 憲治3 (1.聖マリア病院 小児循環器内科, 2.聖マリア病院 心臓血管外科, 3.久留米大学 医学部 小児科学講座)

キーワード:Fallot四徴症, 経皮的肺動脈弁形成術, 肺水腫

【症例】7か月男児、Fallot四徴症(TOF)、肺動脈二尖弁の術前評価のため入院。新生児期に弁下狭窄の進行とともにSpO2は90%台から80%台に低下したため日齢14にβ遮断薬内服を開始し、以後無酸素発作は認めておらず今回入院時のSpO2は90%前後だった。一方で心エコー図検査で肺動脈弁の弁輪径は-2.7SD、弁の流速4.5m/秒、弁下部 1.5m/秒と弁優位の高度狭窄がありLVEDV 62% of normal(modified bullet法)と左室は小さめであった。左室の成長のために弁輪径8.2mmに対し118%径の10mmバルーンで経皮的肺動脈弁形成術(BPV)を施行し、治療後の弁下の過収縮に対しβ遮断薬を静注し合併症なく手技を終了した。しかし治療直後よりSpO2は99-100%と高値となり徐々に多呼吸・気道分泌物の増加・呼気性喘鳴が出現し、帰室2時間頃にSpO2が70%台まで低下し興奮状態となった。無酸素発作を念頭にケタミン静注を行ったところSpO2が急激に低下し測定不能となり、気管内挿管後にピンク色の泡沫状痰が噴水状に吹き出し、高度徐脈となり3分間の心肺蘇生を要した。蘇生後のレントゲンで著明な肺水腫を認め、陽圧換気と利尿剤により徐々に状態は安定し3日後には抜管できた。心エコー図検査で弁下部狭窄は流速2.8m/秒と加速したものの左室は心臓MRIでも正常域まで拡大し、退院時もSpO2は90%台半ばでhigh flowの状態であった。患児は2か月後に自己弁温存の心内修復術を受け術後経過は良好である【考察】BPV後の肺水腫は単純な肺動脈弁狭窄症においても極めて稀で、数件の症例報告があるのみである。TOFは原則的に右室流出路狭窄を有することからBPV後の肺血流過剰のリスクは低いと思われ、肺動脈弁下の過収縮などが問題となることはあるがTOFに対するBPV後の肺水腫の報告はない。【結語】TOFに対する右心系のインターベンション後に呼吸障害が生じた場合は無酸素発作だけでなく、稀ではあるが肺水腫の可能性も念頭に置く必要がある。