第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

集中治療・周術期管理

デジタルオーラル(II)33(P33)
集中治療・周術期管理2

指定討論者:松井 彦郎(東京大学医学部附属病院 小児科)

[P33-3] 当院でのextracorporeal CPRの検討;迅速な導入のためには?

本田 義博1, 加賀 重亜喜1, 吉田 幸代1, 河合 幸史1, 白岩 聡1, 榊原 賢士1, 河野 洋介3, 喜瀬 広亮3, 戸田 孝子3, 鈴木 章司2, 中島 博之1 (1.山梨大学 医学部 第二外科, 2.山梨大学 医学部 医学教育センター, 3.山梨大学 医学部 小児科)

キーワード:心肺蘇生, ECPR, 補助循環

【背景】体外式補助循環を使用した心肺蘇生(Extracorporeal CPR; ECPR)は小児領域でも普及しつつある。補助循環までの時間短縮が予後改善に必要であることはほぼ定説であり、必ずしもマンパワーの多くない施設においてはより効率的なチーム運用を要する。当院では鋼製小物や縫合糸などをキットにしてICUに常備しこれのみでECMO装着を可能としている。【方法】2011年から2019年での当院ECPR例につき後方視的に検討した。【結果】症例8例;男児3例、女児5例。月齢は1から153(中央値6)か月、体重は2.3から41(中央値3.5)kg。うち先天性心疾患5例(単心室型心疾患3)であった。原因は術後急性期の心停止1、心筋炎1、麻酔導入中の循環虚脱1、カテーテル中の右室穿孔1、溺水1、原因不明3であり、3例は院外心肺停止であった。導入前CPRは全体で35から147分(中央74分)、院内例に限ると35から77(73分)であった。2例では補助循環前の自己脈復帰(ROSC)あり。心停止を覚知してよりカニュレーション手技開始までの時間は、院内例でも16から45(中央値31)分であった。補助循環期間は65から145(中央値84)時間。中枢神経障害は5例でいずれも臨床的脳死状態となり、生存退院に至らなかった。5例で心肺離脱、生存退院3例(救命率38.5%)であった。生存例では術前のCPR時間が短い傾向にあり(中央値42分 vs 74分)、執刀開始までの時間が短い傾向にあった(中央値35分vs89分)また導入前にROSCを得た症例ではいずれも生存退院しえた。【考察】症例数が少なく統計学的に検討はできないが、既存の報告と同様low flow timeが短いことがECPRの予後に関与すると考える。われわれの施設では院内心停止症例でも最大で45分程度かかる症例もあり、器材のキット化のみではまだ迅速な導入には不十分である。今後はECPRチームの発動を簡略化すること、シミュレーションなどでチームの動きを確認すること、などが有効かと思われる。