[P35-2] 小児開心術後の非外科的持続性出血に対する第VII因子製剤の効用
キーワード:遺伝子組換活性型第VII因子製剤, 非外科的持続性出血, 開心術
【目的】高侵襲な小児開心術では人工心肺時間延長に伴い容易に凝固・線溶の不均衡が惹起され術後出血が遷延する例が少なくない。遺伝子組換型活性化第VII因子製剤 (rFVIIa) は制御困難な非外科的持続性出血に有用との報告が散見されるが止血効果やメカニズム解明には至っていない。当院で止血目的にrFVIIaを使用した小児開心術症例をもとに功罪を後方視的に検討した。【方法】2011年以降一般的な止血操作で制御困難であった非外科的持続性出血に対しrFVIIaを使用した高侵襲小児開心術18例を対象。手術の内訳はNorwood5例、Jatene4例、Truncus修復1例、Rastelli2例、TAPVC修復1例、IAA+VSD修復1例、BDG+AVVR1例、VSD再閉鎖1例、再TVR+RVOTR1例、AS交連切開1例。手術時日齢中央値40 (0–1619)日、体重中央値3162(2580–12100)g。全例人工心肺離脱後2時間に及ぶ止血操作と血小板輸血にも拘わらず出血が遷延し不安定な血行動態を生じ、rFVIIa 90μg/kgを単回静注した。Norwood2例とJatene2例では約2時間後に同量を追加静注し効果を得た。【結果】平均rFVIIa使用量126 (33–271)μg/kgの静注により、60分以内に出血を制御し安定した血行動態を得た。術後PT活性値は術前より有意に高く(術前63±17%、術後平均166±41%、p<0.01)rFVIIa使用量と術前後のPT活性値の変化量の間で強い関連性を示した。術前後のAPTT、AT3値に有意な相関関係は認めず。rFVIIa使用に伴う血栓塞栓症などの有害事象は全例認めなかった。【結論】侵襲度の高い先天性心疾患術後の非外科的持続性出血に対してrFVIIaを補充することで、破綻していた外因系凝固機能が補完され有効な止血効果を来したと考えられた。今後更なるメカニズム解明を追求し事例を重ね、rFVIIaの至適な使用法確立を目指したい。