第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

集中治療・周術期管理

デジタルオーラル(II)35(P35)
集中治療・周術期管理4

指定討論者:猪飼 秋夫(静岡県立こども病院 心臓血管外科)

[P35-4] 呼吸障害を合併した先天性心疾患に対する在宅高流量鼻カニュラ療法の導入

花木 由香, 宗内 淳, 杉谷 雄一郎, 松岡 良平, 土井 大人, 江崎 大起, 渡辺 まみ江 (九州病院 小児科)

キーワード:在宅医療, 在宅人工呼吸, 染色体異常

【緒言】高流量鼻カニュラ(HFNC)療法は加湿した高流量気により気道内圧を維持し鼻咽腔抵抗の減少や肺胞リクルートメント効果などが期待され、周術期を含めて先天性心疾患に合併した呼吸障害に汎用されている。種々の問題のため長期に渡りHFNC療法から離脱できず、在宅HFNC療法を導入した先天性心疾患症例を経験した。
【方法】2017-2019年に在宅HFNC療法を導入した5例について問題点を検討する。
【結果】導入時年齢は0-9歳、体重3-11kg、性別は男4:女1例。全例染色体異常を合併し、トリソミー18:3例、トリソミー21:2例であった。心疾患は心室中隔欠損症3例、ファロー四徴症兼完全型房室中隔欠損症1例、心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症1例であった。1例はBlalock-Taussigシャント術後であり、4例は手術介入のない症例であった。合併症は肺高血圧症4例、小顎症4例、West症候群、気管支喘息がそれぞれ1例であった。HFNC療法導入前の酸素飽和度50-90%で、呼吸障害の原因は、気道狭窄による呼吸障害とチアノーゼ発作2例、入眠中の酸素飽和度低下あるいは中枢性無呼吸2例、誤嚥性肺炎後の離脱困難1例であった。在宅HFNC用呼吸補助器(MediOx 60、パシフィックメディコ社)導入3例で、うち1例はその後気管切開となり現在は在宅人工呼吸管理中である。残る2例はバッテリーの問題から在宅人工呼吸器(Trilogy 100+またはBiPAP A40、Philips社)の持続陽圧呼吸(CPAP)モードで経鼻カニュラを接続しHFNC療法として使用した。
【考察】在宅HFNC用呼吸補助器はバッテリーが無く通院中の移動などの際に支障をきたす。自験5例中2例では在宅人工呼吸器のマスクCPAPモードを経鼻的に使用してHFNC療法の代用としたが、圧設定のため流量を確保できないといった問題点があり、安全性において課題が残る。また在宅人工呼吸指導管理料が算定できないので制度改定が望ましい。