[P38-1] Dystrophic calcificationを合併した新生児劇症型心筋炎の一例
キーワード:新生児劇症型心筋炎, Dystrophic calcification, ECMO
【はじめに】心筋炎では炎症部位に一致した壁運動低下と浮腫による壁肥厚を認めるが、多くは一過性でECMOを含めた適切な治療により回復する。しかし、まれに心筋が菲薄化して石灰化するdystrophic calcificationを合併し、予後不良となることが報告されている。今回、dystrophic calcificationを合併したものの、ECMOにより救命し得た新生児劇症型心筋炎の1例を経験した。【症例】日齢9の男児。分娩4日前に母体に発熱があったが自然に解熱した。他、妊娠、分娩経過に問題なく、在胎38週5日に経膣分娩で出生。出生体重2324g。日齢7から哺乳不良が出現し日齢8に近医を受診した。胸部X線で心拡大、心エコーで心収縮低下があり、心筋逸脱酵素の上昇も認めたため、日齢9に当院へ搬送となった。当院での心エコーでもEF 30%と心収縮は低下し、特に心室中隔の心基部領域でエコー輝度の亢進と著明な壁運動低下を認めた。心筋炎と診断し免疫グロブリン、オルプリノン、ドブタミンによる治療を開始したが、心機能はさらに悪化したため転院12時間後にVA-ECMOを装着した。ECMO装着6日頃より心室中隔心基部の輝度亢進部分が徐々に音響陰影を伴う石灰化病変へと変化し、その後心筋も菲薄化してきたため、dystrophic calcificationの合併と診断した。Dystrophic calcificationの範囲は限局的で他部位の壁運動は徐々に回復したため、ECMOは装着12日目に離脱した。現在ECMO離脱後1ヶ月になるがdystrophic calcificationは残存し、同部位の壁運動は低下したままである。【考察】Dystrophic calcificationを合併した心筋は、壁運動低下が残存するため予後不良因子となるが、本症例では範囲が限局的であったため良好な経過を辿ったと考えられる。病初期から心筋のエコー輝度亢進と壁運動低下が著明な場合は、心筋の障害が特に強く、dystrophic calcificationに進行する可能性があり範囲によっては予後不良となるため注意が必要である。