第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

心筋心膜疾患

デジタルオーラル(II)38(P38)
心筋心膜疾患3

指定討論者:木村 正人(宮城県立こども病院 循環器科)

[P38-2] マイコプラズマ感染により劇症型心筋炎、完全房室ブロックをきたした1例

鈴木 孝典, 山田 佑也, 伊藤 諒一, 森本 美仁, 郷 清貴, 鬼頭 真知子, 森鼻 栄治, 河井 悟, 安田 和志 (あいち小児保健医療総合センター 循環器科)

キーワード:マイコプラズマ感染, 劇症型心筋炎, 完全房室ブロック

【背景】心筋炎の多くはウイルス感染に起因する。劇症型心筋炎は急激に血行動態の破綻を来し致死的な経過をたどるが、房室ブロックを合併することもある。今回我々はマイコプラズマ感染により完全房室ブロックを合併した劇症型心筋炎症例を報告する。【症例】症例は特に既往のない9歳女児。入院5日前より咳嗽、発熱を認めた。入院当日の眼球上転,尿失禁を認め前医へ救急搬送。心収縮不良(LVEF 40%)、房室ブロック、高度徐脈から心肺停止に至り蘇生を要した。アドレナリン持続投与下に当院へ転院搬送となった。来院時、意識混濁、体温38.6℃、心室拍数 40bpm、血圧 96/53mmHgで、心筋逸脱酵素上昇を認めた。劇症型心筋炎、完全房室ブロックの診断でECMO導入、ガンマグロブリン投与を行った。ECMO導入直後の心室の収縮を認めなくなったが、初回ステロイドパルス投与完了とほぼ同時にイソプロテレノール(0.05γ)が体内に到達すると、急速に房室伝導が1:1に回復しnarrow QRSを呈した。その後はむしろ頻脈でイソプロテレノールを減量したが房室伝導は悪化せず、3日後ECMO離脱可能であった。以後、心室機能低下や房室伝導障害の所見はみられず、21日後に退院となった。入院時の咽頭粘液検体でLAMP法陽性、マイコプラズマ感染症と診断した。【考察】マイコプラズマ感染症に起因する心筋炎、房室ブロックの報告は散見される。本症例では原疾患に対する抗菌療法は行わなかったが、抗炎症療法で速やかに房室伝導障害の改善が得られたことから、マイコプラズマ感染により二次的な免疫反応が惹起されたことが原因であると考えられた。