第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

心筋心膜疾患

デジタルオーラル(II)38(P38)
心筋心膜疾患3

指定討論者:木村 正人(宮城県立こども病院 循環器科)

[P38-5] リウマチ熱3例についての検討

中原 優, 土井 悠司, 上田 和利, 佐藤 一寿, 荻野 佳代, 林 知宏, 脇 研自, 新垣 義夫 (倉敷中央病院 小児科)

キーワード:rheumatic fever, Jones criteria, Streptococcus pyogenes

【背景】日本を含めた先進国ではリウマチ熱(RF)の頻度は低いが、リウマチ性心疾患(RHD)や心不全を来しうる疾患であり、適切な診断と対応が求められる。当科で経験した3例をもとにRFの診療を再考する。【症例】症例1は12歳男児。発熱とCRPの上昇(14.3 mg/dL)、心エコーで少量の心嚢液を認めるのみで川崎病として治療開始したが、反応は不良であった。はっきりとした多関節炎の症状がなく、追加で提出した抗ストレプトリジンO抗体(ASO)が 399 IU/mLでありRFと診断し抗菌薬を開始した。症例2は10歳女児。発熱と移動性の関節痛があり、心エコーで僧帽弁逆流を認めた。血液検査でASO 6096 IU/mLと上昇を認めRFと診断。症例3は8歳女児。発熱と胸痛を主訴とし、心エコーで心膜輝度亢進と心嚢液貯留を認め、当初は心膜炎としてアスピリン内服を開始したが入院時のASO 1356 IU/mLと上昇ありJones criteriaを満たし、RFとして抗菌薬を追加した。【考察】RFはStreptococcus pyogenesの咽頭感染に続発する自己免疫反応と考えられている。急性期の治療も重要だが、溶連菌再感染時にRHDが悪化しうるため抗菌薬の予防投与が必要とされている。症例2は典型的な経過であり容易に診断に至ったが、症例1は関節症状が乏しく、抗体価の提出が遅れ診断までに時間を要した。症例3は明らかな関節症状が無く、RFの初療が遅れた例であった。症例毎に経過は様々でありRFを常に鑑別に挙げ診療にあたることが重要と思われた。またJones criteriaの心症状はエコー所見のみでも陽性ととれるが、胸痛などの症状がない例については診断に至っていない可能性も考えられる。【結語】エコーによる画像診断の重要性が増す昨今においてはRFの診断基準を満たす症例が増えてくる可能性が考えられる。症例毎に症状が異なることもあり、RFの診断についていま一度再考する必要がある。