第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

心筋心膜疾患

デジタルオーラル(II)41(P41)
心筋心膜疾患6

指定討論者:髙橋 啓(東邦大学医療センター 大橋病院病理診断科)

[P41-1] 心タンポナーデを契機に診断された縦隔リンパ管腫(リンパ管奇形)の一例

濱田 優季, 蓮把 朋之, 福永 啓文, 森内 浩幸 (長崎大学病院 小児科)

キーワード:心タンポナーデ, 乳糜心嚢液, リンパ管腫

【背景】
リンパ管腫(リンパ管奇形)はリンパ管の発生異常により胎生期に発生する疾患で、好発部位は頭頚部や腋窩、縦隔である。その多くは体表に突出する腫瘤として認めるため新生児~乳児期までに診断されることが通常であり、年長児以降に診断されることは少ない。5歳で心タンポナーデを契機に心嚢に浸潤した縦隔リンパ管腫と診断された稀な症例を経験したので報告する。
【症例】
5歳男児。2歳頃より呼吸器感染を反復していた。発熱と咳嗽を主訴に近医を受診し肺炎の疑いで前医に紹介となった。胸部単純写真で胸水、心拡大(CTR 78%)と心エコーで多量の心嚢液を認め、精査加療目的で当院に紹介入院となった。受診時には頻脈で努力呼吸が著明であった。心エコーで全周性に5cmの心嚢液貯留、右室壁奇異運動、拡張障害を認めた。心タンポナーデと診断し緊急心嚢穿刺ドレナージを施行したが、心嚢腔からは大量の血性心嚢液が連日持続した。心嚢液の白血球分画はリンパ球優位(97%)、TG(271mg/L)であり、リポ蛋白分析ではカイロミクロンの上昇を認めため乳糜心嚢液と診断した。リンパ漏の原因検索のためリンパ管シンチグラフィを行ったところ上・前縦隔から心嚢腔へリンパ液が流入しており、MRIで頚部、上・前縦隔に多数の嚢胞性腫瘤を認めたためリンパ管腫と診断した。心膜生検ではリンパ管腫の心膜への浸潤が確認された。対症療法として1~3L/dayの大量リンパ漏に対して適宜血液製剤,アルブミン製剤の補充を行い、リンパ管腫にはステロイドやオクトレオチド、β遮断薬を投与したが無効であった。外科的に頚部・縦隔リンパ管腫切除術、胸管結紮術を施行したが、最終的にはOK-432による硬化療法が奏効した。
【結語】
原因不明の心タンポナーデで大量の心嚢液が持続する場合には血性であっても乳糜の可能性がある。原因の特定にはリンパ管シンチグラフィとMRIが有用であった。