[P42-2] Fontan術後26年で心不全に対し外科的介入を行うも救命しえなかった一例
キーワード:成人先天性, Fontan術後合併症, 心不全
【背景】成人期Fontan循環の遠隔期合併症が明らかにされる中,良好なFontan循環を維持する為に内科的治療に加え適切な外科的再介入を考慮すべきである.しかし,心室機能障害や臓器不全を反映した耐術能評価と再介入時期については未だ明確な指標がない.【目的】Fontan術後26年で徐々に心不全が進行,カテコラミン依存となった肝腎不全症例に対し,心室同期療法を施行後多臓器不全,死亡に至った一例を経験したので報告する.【症例】45歳男性.診断は,MA, DORV, PS.3歳時にlt.original Glenn+rt. SVC ligationを施行.7歳時にペースメーカー埋込,20歳時にlateral tunnelでのFontan術,33歳時にTCPC conversion+TVR+Maze,36歳でredo-TVRを施行した.Cre 1.0mg/dL程度の腎障害と軽度肝障害, EF 40%台の心機能低下があったが状態は横ばいで経過していた.しかし,42歳頃より全身浮腫と労作時呼吸苦を呈するようになりそれ以降心不全入院を繰り返すようになった.心移植が検討されたが,家族と本人が拒否された.それ以降,EF 30%台に低下しCre 2.0mg/dLと腎機能増悪傾向でカテコラミンの離脱が困難となった.心エコーではdyssynchronyあり,心電図でのQRS幅は190msでCRT適応と判断された.画像上,肝臓は線維化が強くかなりの肝障害が示唆されたが,データ上Child A, fibroscanや肝アシアロシンチでも肝機能は軽度低下という結果であり,手術の方針となった.術中の CRT埋込にてQRS幅の改善を認め手術は終了.術後はCre 2.5mg/dLまで腎機能増悪し CHDFを使用し術後12日目に一旦抜管に至ったものの,肺水腫の進行で再挿管となり,その後は肝腎不全が増悪し術後38日目に死亡に至った.【まとめ】外科的介入のタイミングがカテコラミン依存後であり介入の時期は適切であったか.また,Fontan術後肝予備能の指標に明確なものがない中で,今回のように肝障害軽度と分類される症例の外科的介入の余地をどのように判断すべきか,という点において議論したい.