第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

自律神経・神経体液因子・心肺機能

デジタルオーラル(II)43(P43)
自律神経・神経体液因子・心肺機能

指定討論者:南沢 享(東京慈恵会医科大学 細胞生理学講座)

[P43-4] 起立性調節障害における苓桂朮甘湯療法は交感神経遮断作用を示す

高橋 一浩 (木沢記念病院 小児科)

キーワード:起立性調節障害, 自律神経機能, 漢方療法

【背景】起立性調節障害(OD)の薬物治療薬としてメトリジンの有用性は確立されている。併用療法としての漢方療法は適応や効果が不明である。苓桂朮甘湯の臨床的効果を後方視的に検討した。【方法】対象は2018年1月から2019年6月に起立不耐(OI)で当院に紹介され旧起立試験が陽性であったOD患者のうち、内服加療後にホルター心電図検査を施行した24名(年齢中央値12歳、女性12名)。血液検査、胸部写真など行い基礎疾患を除外した。臨床所見はbody mass index、心胸郭比(CTR)、東洋医学的所見(特に水毒所見)を検討した。内服療法により3群に分類した:Midodrine群(M群、10名);苓桂朮甘湯併用群(M&R群、6名);苓桂朮甘湯単独群(R群、8名)。自律神経機能は心拍変動解析(時間及び周波数ドメイン)を行い、以下の各指標を使用した。交感神経活性:SDANN、SD2/SD1、LFnu、LF/HF、副交感神経活性:CVNN、RR50、%NN50、RMSSD、HFnu。【結果】M群ではCTRが有意に(p=0.03)低値で小心臓であった。R群、M&R群では有意に(p<0.02)水滞所見を認め、交感神経指標SD2/SD1の昼間/夜間比が有意に(p=0.045)低値であった。【結論】OD患者において苓桂朮甘湯療法は昼間の交感神経活性抑制作用が示した。ODでは少量のβ遮断薬併用の効果が報告されており、水毒所見を認める場合は、苓桂朮甘湯を併用することも選択肢となる。苓桂朮甘湯やβ遮断薬の併用療法について今後大規模試験が必要である。