[P51-1] Aortopathyをきたす先天性心疾患群での上行大動脈の長軸方向への伸展性の検討
キーワード:Aortopathy, 左心低形成症候群, ファロー四徴症
【背景】ファロー四徴症、左心低形成症候群、また二尖大動脈弁患者においては、遠隔期に上行大動脈基部が拡大してくる症例があることは知られている。これは上行大動脈の弾性が低下するaortopathyが病態と考えられている。左心低形成症候群においては、上行大動脈径の拡大だけでなく、大動脈弓の成長障害による大動脈弓下スペース縮小に伴った肺動脈狭窄も重要な問題点である。上行大動脈径の拡大に関する研究は散見するが、aortopahtyによる長軸方向の成長障害に関する報告は少ない。【目的】上行大動脈の弾性が上行大動脈横径および長軸方向の成長にどのように影響するかを検討する。【方法】2008年以降に当科で心臓カテーテル検査を複数回行った症例を研究の対象とした。左心低形成症候群(H群)(21症例、年齢0~13歳、カテーテル件数81回)、ファロー四徴症(T群)(18症例、年齢0~20歳、カテーテル件数46回)。コントロール群として川崎病(C群)(20症例、年齢0~18歳、カテーテル件数53回)。計測項目:1)大動脈造影における大動脈弁輪~大動脈弓頂部までの長軸長(身長で補正)、2)左室駆出期における上行大動脈最大径、3)大動脈最大径・最小径および収縮期・拡張期圧から求めたAO distensibility。【結果】3群において長軸長/身長比は年齢とともに低下した。H群ではT群・C群に比して低下の度合いが高度であった。AO distensibilityはH群<T群<C群の順で有意に低値だった(p<0.0001)。しかし、AO distensibilityと大動脈長軸長との間に有意な関連は認めなかった。【結論】左心低形成症候群ではAO distensibilityがファロー四徴症よりも低下していることが示されたが、これは長軸方向の成長との関連は示されなかった。左心低形成症候群においてはNorwood手術による上行大動脈の縫合ラインやパッチなどによる2次的な要因が長軸方向の成長障害の主因と考えられ、弾性低下との直接の関連は認められなかった。