第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

成人先天性心疾患

デジタルオーラル(II)53(P53)
成人先天性心疾患1

指定討論者:稲井 慶(東京女子医科大学心臓病センター 循環器小児・成人先天性心疾患科)

[P53-1] 成人期再手術のタイミングを症状から考える

江見 美杉, 成田 淳, 平野 恭悠, 石井 良, 石田 秀和, 大薗 惠一 (大阪大学大学院医学系研究科小児科)

キーワード:成人先天性心疾患, 手術, 症状

<背景・目的>先天性心疾患では修復術が完了した症例でも、再手術を要することがある。しかし成人の場合、社会的立場や自覚症状が乏しいなどの理由が手術時期に影響をすることがある。そこで今回、成人期に再手術を行った症例を対象として術前後の症状を知ることで手術を行うタイミングを検討することを目的とした。<対象・方法>2018年までに手術を行い、術前と術後1年後の症状が把握できた42例を対象とした。術前の自覚症状、手術に伴う症状の変化、また症状の改善、悪化をもたらす検査所見について後方視的に検討を行った。<結果>手術内容PVR28例、TCPCconversion7例、その他7例。手術時年齢20-55歳(29±7.9歳)。術前自覚症状は28例で認められうち23例で症状の改善があった。この23例のうち、15例が術前動悸、脈の違和感の症状がありうち11例は軽減したものの術後同様の症状が残った。1例が術後1年以内に死亡した。以下術別に検討を行った。PVR28例では自覚症状があった19例のうち14例で症状の改善が認められた。特にPRのためにPVRを施行した16例では自覚症状があった9例のうち8例で症状の改善が認められ、うち2例で症状が消失した。悪化した症例はいなかった。自覚症状が残った症例群はそれ以外の症例群と比較して術前RVEDVが有意に大きく、そのカットオフ値は153ml/m2であった。TCPCconversionを行った7例のうち術前に症状があった4例は全例で症状の改善があった。また術後に症状が悪化した1例では術前心室拡張末期圧が高値を示していた。<結論>術前に症状がある場合、術後改善することが期待されるが、動悸や脈の違和感の症状は消失することは難しい。PRによりPVRを要する症例では、術後無症状を目指すためRVEDVが150ml/m2以上に至る前に無症状であっても介入を考慮する必要があるのかもしれない。