[P53-2] フォンタン術後症例におけるThebesian静脈はよく見られ、かつ遠隔期に発達する
キーワード:Fontan, Thebesian静脈, 冠動脈
【背景】心房・心室筋を通過し直接心腔内へ還流する冠静脈をThebesian静脈(ThV)という。血管造影で描出されるThVはまれな所見であり、成人においては時に心筋虚血や容量負荷の原因になると報告されている。しかし、先天性心疾患におけるThVに関する報告はきわめて少ない。【目的】フォンタン術後遠隔期におけるThVの頻度・成長による変化などを明らかにすること。【方法】15歳以上でカテーテル検査を施行したフォンタン術後症例を対象とし、大動脈造影で明らかに描出されるThVの有無を調べた。ThVを認めた症例について過去の大動脈造影所見と比較した。運動負荷心電図所見や臨床症状の有無について調べた。純型肺動脈閉鎖は対象から除外した。【結果】対象となった症例は75例で、有意なThVを12例(16%)に認めた。右室型単心室が6例でもっとも多く、左室型単心室(TAを含む)が4例、unbalanceな2心室症例が2例であった。左室型単心室であってもThVが還流する心室はすべて右室であった。過去の検査と比較すると全例でThVが発達しており、冠動脈の拡張・蛇行を認めた。6例で運動負荷心電図を施行したがST変化を認めるのは1例のみで、胸痛の既往がある症例はなかった。【考察】すべて右室を伴う症例であったことから、長期間右室が体血圧にさらされていることにより発達する可能性が示唆されたが、右室型単心室でも認めない症例も多く存在すること、過去に施行した機能的修復術後の修正大血管転位7症例の大動脈造影では1例も認めず、subaortic RVのみがThV発達の原因ではないと推察される。また、1例で心電図上虚血が疑われる所見を認めたが、虚血症状を呈した症例はなく、ThVが発達していることの臨床的意義は不明である。【結語】フォンタン術後遠隔期におけるThVはよく見られる所見であり、また年齢とともに進行する。その臨床的意義は不明であるが、心筋虚血や容量負荷の出現に注意してフォローアップすることが必要である。