[P56-1] 愛媛大学における成人先天性心疾患診療 ~地方大学での現状と課題~
Keywords:成人先天性心疾患, 移行期医療, 診療体制
当院では2018年11月より移行期・成人先天性心疾患(ACHD)外来を開設し、循環器内科によるACHD診療を開始した。早期にACHD診療を開始した施設からは5年以上遅れている。当院ACHD外来は開設1年2ヶ月で100症例に達し、院内紹介は59例(小児科・小児心臓外科からの移行44例)、院外紹介は41例であった。県内基幹病院への調査では(回答8施設) ACHD症例の総数は小児科291例、循環器内科114例で、小児科からACHD外来への移行は3例であった。当院のACHD外来は県内のACHD症例の大半を当院小児科が担当しているため(約550例)、同一施設内移行が可能である。また、特徴として一部の中等度と複雑CHD症例は長期間での小児科と循環器内科の併診期間を設けている。これは、(1)循環器内科医が不慣れな複雑CHDや染色体異常症例の診療サポート、(2)不整脈・デバイス治療等、循環器内科の専門医への容易なコンサルトを可能としている。ACHD患者の社会的問題(就職・妊娠出産等)は、診療対象の多くが高齢者である内科医への移行では必ずしも解決しない。小児科医の方が知識に富むことがあり併診はこの点で強みである。ACHD診療を担当する循環器内科医はCHDの知識ゼロからのスタートのため、小児科で2年間の研修を行っておりCHDの効率の良い修練と小児科・小児心臓外科とのより良い連携を目的としている。今後の課題は、院内移行が1割に満たず、更なる効率的な移行が急務である。また、ACHDセンターを設立し他科やコメディカルと連携した包括的診療体制の構築が必要である。県内基幹病院のACHD症例の移行整備も重要である。過去に都会で修復術を受けたが、専門施設でのフォローを受けていない症例も存在するため、当院ACHD外来の存在を地域に浸透させ受け入れ先となる必要がある。高齢化社会により循環器内科医の負担増が予想されるが、地方ではACHDを担う循環器内科医の確保が困難となるため、小児科と循環器内科とのさらなる連携が重要である。