[P59-1] 周産期低酸素は若年SUGEN/低酸素ラットにおいて肺動脈性肺高血圧を増悪させる:新たな致死性、進行性のPAHラットモデルとその分子的機序
キーワード:肺動脈性肺高血圧, 周産期低酸素, エピジェネティック
【背景】周産期侵襲が遠隔期の肺動脈圧上昇に繋がる事を示唆するデータが知られているが、肺動脈性肺高血圧(PAH)、閉塞性血管病変(PVD)への影響は不明である。【目的】周産期低酸素刺激がSUGEN低酸素(SuHx)処置PAHラットのPAHとPVDを悪化させるという仮説を検証した。【方法】胎児ラットを出産前後の10日間の低酸素暴露により周産期低酸素ラットを作成した。7週齢ラットにSUGEN5416投与と3週間低酸素暴露によりSuHx処置PAHラットを作成した。周産期低酸素の有無に7週齢SuHx処置の有無を掛けた4群を作成し(N=40)、15週齢で血行動態解析(RVSP、AoSP、RV/LV+IVS)と肺血管形態解析(閉塞性血管病変・叢状病変の比率、中膜肥厚率)を行った。また周産期低酸素の影響を確認する為、7週齢のSUGEN処理前の健常ラットで血行動態解析と肺血管形態解析を行った(N=8)。さらに、7週齢ラットから採取、培養した肺動脈平滑筋細胞(PASMC)を用いて細胞増殖能を測定した(N=12)。【結果】15週齢のSuHx非処置健常ラットで、周産期低酸素は体重増加、生存率、血行動態、組織のいずれの指標にも影響しなかった。15週齢のSuHx処置ラットで、周産期低酸素が体重増加率(<.001)、生存率(60%vs100%、<.001)、RVSP(<.001)、RVSP/AoSP(<.001)、RV/LV+IVS(<.001)、閉塞性血管病変率(<0.05)、叢状病変率(<0.05)、中膜肥厚(<0.05)を悪化させた。SuHx処置前7週齢の健常ラットでも、周産期低酸素は体重増加、生存率、血行動態、組織のいずれの指標にも影響しなかった。7週齢ラットから採取、培養したPASMCにおいて周産期低酸素はERKのリン酸化を亢進させ(<.005)、増殖能を増加させた(<.005)。【結論】周産期低酸素は、健常ラットに影響はないが、PAHラットの生存率、血行動態、閉塞性血管病変を悪化させた。周産期侵襲が関連したPASMC増殖能の亢進は、エピジェネティックなメカニズムを介してラットの閉塞性PVDの発生に寄与する可能性がある。