[P59-2] 可逆性の肺高血圧症および右心不全を呈し、確定診断に苦慮した閉塞性睡眠時無呼吸症候群の幼児例
キーワード:睡眠時無呼吸症候群, 肺高血圧, 右心不全
【背景】小児の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は稀ながら肺性心を惹起することがあり、その原因の大多数は著明な口蓋扁桃肥大およびアデノイド増殖症とされている。今回我々は口蓋扁桃肥大およびアデノイド増殖症は軽度とされたものの、OSASによって可逆性の肺性心をきたしたとみられる症例を経験したので報告する。【症例】2歳7か月男児。2歳頃から入眠中のいびきが目立ち始め、2歳6か月頃から顔面浮腫が出現し、当科を紹介受診。胸部単純X線写真で心拡大を認めた。心臓超音波検査では右心拡大を認め、覚醒中の推定右室圧は体血圧の5割弱であったが、自然入眠時には約8割と悪化した。さらにこの際強いいびきを認め、経皮的酸素飽和度(SpO2)70%台と低値であり、BNP 2,800pg/mlと著増していたことから肺高血圧症および右心不全を疑い緊急入院。気管挿管、集中治療室での管理を要した。各種精査により心内・心外シャント、下気道狭窄は否定された。気管挿管直後から肺高血圧はほぼ消失し、入院5日目に抜管。OSASを強く疑ったが、耳鼻咽喉科による診察では口蓋扁桃肥大およびアデノイド増殖症は軽度であり手術適応はないとされ、入眠中に複数回装着したカプノメーターでもCO2貯留は検出されなかった。しかし入院16日目から睡眠時無呼吸が顕在化し、その間のSpO2低下とEtCO2高値(60mmHg台)を認めた。この時点でも口蓋扁桃肥大およびアデノイド増殖症は軽度と判断されたが、診断的治療として口蓋扁桃・アデノイド切除術を施行したところ、OSASは大きく改善。その後も肺高血圧症や右心不全の再燃はみられていない。【考察】小児では口蓋扁桃肥大やアデノイド増殖症が軽度であってもOSASが生じ、可逆性の肺性心をきたすことがある。本発表ではその複合的要因についても検討する。肺性心の診断においては症状や所見の経時的変化をとらえ、丁寧に鑑別を進めることが重要である。