[P59-5] 肺高血圧症を呈したScimitar症候群, 肺分画症の一乳児例
Keywords:scimitar症候群, 肺高血圧, 肺分画症
【はじめに】Scimitar症候群は, 右肺静脈の全てまたは一部が下大静脈に流入する部分肺静脈還流異常(PAPVR)があり, Scimitar signを認めるものと定義され, 肺分画症や肺高血圧症(PH)を高頻度に伴う. 【症例】4ヵ月女児. 4ヵ月健診で体重増加不良を指摘され, 前医に紹介. 心エコーで右心室拡大, 推定圧較差55mmHgの重度三尖弁閉鎖不全(TR)からPHの診断で, 当院に紹介となった. 造影CTで, 右肺静脈の右房と下大静脈への還流, 腹腔動脈を起始し右下肺野を還流する異常血管を認めた. 心臓カテーテル検査でScimitar症候群, 肺分画症, 高心拍出性心不全と診断し, 肺分画症の主要還流動脈塞栓術を施行した. 塞栓術後, 右室圧 44/edp8, 平均肺動脈圧(mPAP) 28mmHgに改善した. 利尿薬中止後1ヵ月の外来受診でPH増悪(TRPG 77mmHg)を認め利尿薬を再開し, TRPG 40mmHgに改善した. 生後7ヵ月, Qpへの寄与が大きいと考えた右肺静脈-右房のPAPVR修復術を施行. 術後にsildenafilを導入した. 1か月後の心臓カテーテル評価でQp/Qs=1.2, mPAP 36mmHg, Rp 8.4u・m2とPHの増悪を認め, ambrisentan導入と酸素投与を開始している. 【考察】肺血管拡張薬の導入は容量負荷を増悪させる可能性を懸念し, PAPVR修復術後に行った. 残存している肺分画症の栄養血管に対して経皮的塞栓術を検討している. 【結語】Scimitar症候群の解剖学的修復は障壁が多く, PHを伴う場合の治療方針を単純に“treat and repair”と“repair and treat”に二分することは難し, 血行動態評価に基づく治療方針再検討の反復が必要である.