第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

その他

デジタルオーラル(II)78(P78)
その他3

指定討論者:矢崎 諭(榊原記念病院 小児循環器科)

[P78-4] 先天性食道閉鎖に下大静脈欠損を合併した新生児例

中嶋 滋記, 安田 謙二, 竹谷 健 (島根大学 医学部 小児科)

キーワード:先天性食道閉鎖, 下大静脈欠損, 左上大静脈遺残

【はじめに】先天性食道閉鎖に先天性心疾患を合併することはしばしばあるが、血行動態に問題のない体静脈異常のみを来す報告は見当たらない。また、根治手術の際には、奇静脈を切離することが多い。今回、我々は術中所見での奇静脈の拡張を契機に診断された下大静脈欠損の新生児例を経験した。【症例】在胎39週1日、出生時体重 2304g、Apgar score 7/9で出生した男児。【経過】前医で経膣分娩で出生後、頻回嘔吐を認め、胃菅留置時のcoil up signで確定診断され、当院に新生児搬送となった。食道閉鎖以外の合併奇形は認めず、日齢0に胃瘻造設術、日齢3に根治手術を行った。術前のスクリーニング心エコーでは、下大静脈が細いことを指摘されていたが、特記すべき異常所見ではないと判断した。術中所見で奇静脈の拡張を認めたため、下大静脈欠損の可能性も考慮し、切離はせず根治手術を行った。術後にエコー再検し下大静脈欠損・奇静脈接合と確定診断した。、また、左上大静脈遺残と思われたが、還流部位が同定できなかった。術後の回復を待ち、造影CT検査を行ったところ、左上大静脈は半奇静脈経由で奇静脈と交通し右上大静脈に還流していた。なお、心房形態や胸腹部臓器形態からは、心房内臓錯位症候群は否定的であった。【まとめ】複雑な体静脈系の異常を合併した食道閉鎖の症例を経験した。食道閉鎖の症例では、少なくとも下大静脈の有無の評価はしておいた方が良いと思われた。