[P79-5] 再調整のない両側肺動脈絞扼術を目指す-絞扼部の拡張期肺動脈血流速度の重要性-
キーワード:肺動脈絞扼術, 至適指標, 血流速度
【背景】両側肺動脈絞扼術(bil.PAB)における絞扼の至適サイズ決定には未だ明確な基準がない.我々は2mm幅のePTFE stripを用い,SpO2低下,血圧上昇に加え,epicardial echoでの絞扼部の流速(収縮期>2.5-3.0m/s,2016年以降は拡張期>1.3-1.5m/s,拡張期/収縮期の比>0.5)を指標としてbil.PABを行ってきた.【目的】絞扼の至適サイズ決定における絞扼部肺動脈血流速度の術中計測の有用性を検証する.【対象・方法】対象は2008年以降に施行したbil.PAB33例のうち経過を評価し得た30例.術後絞扼の再調整が必要となった症例(高肺血流:H群4例,低肺血流:L群2例)を再調整が不要であったN群24例と比較検討した.【結果】手術施行時の日齢5(3-94)(median,range).体重2.5(1.9-3.4)kg.診断はHLHS14,IAA/CoA complex11,TAC5.絞扼部の周径(mm)は右がH群10.5(10.0-11.0), L群8.8(8.0-9.5), N群9.0(7.5-11.0)(p=0.04),左がH群10.3(10.0-11.0), L群8.3(8.0-8.5), N群9.5(8.0-14.0)(p=0.04).絞扼部の流速(m/s)は右:収縮期:H群3.1(3.0-3.3), L群2.7(2.4-3.0), N群2.7(2.3-3.5)(p=0.08), 拡張期:H群1.2(1.0-1.3), L群1.8(1.7-1.8), N群1.6(0.7-2.0)(p=0.02). 左:収縮期:H群3.4(2.7-3.5), L群3.0(2.6-3.4), N群3.0(2.4-3.6)(p=0.29), 拡張期:H群1.2(0.7-1.6), L群1.8(1.8-1.8), N群1.5(1.0-2.0)(p=0.11). 拡張期/収縮期比は右:H群0.38(0.30-0.42), L群0.65(0.60-0.71), N群0.56(0.30-0.70)(p=0.01), 左:H群0.38(0.20-0.47), L群0.61(0.53-0.69), N群0.55(0.42-0.69)(p=0.01).拡張期流速,流速比がH群で低くL群で高い結果であった.2016年以前の再手術の頻度は16例中5例(31%)であったのに対し,以降は14例中1例(7%)(p=0.08)と減少傾向を認めた.【結論】術中エコーによる絞扼部の収縮期流速に比し,拡張期流速(1.3m/s以上),流速比(0.5前後)が指標として有用と思われた。これら指標を用いることでbil.PAB術後の再調整の頻度を減らせる可能性が示唆された.