[P85-1] サイズミスマッチのある大血管位置異常を伴う症例に対する大血管転換手術の工夫
Keywords:大血管転換手術, サイズミスマッチ, 血流解析
【背景および目的】大血管位置異常を伴う先天性心疾患において、大動脈と肺動脈のサイズミスマッチを伴うことは少なくない。それにより、大血管転換手術後の吻合部における大動脈弁上狭窄や、Valsalva洞形態の変化に伴う大動脈弁逆流が生じることが示唆されている。今回、大血管転換手術後の新大動脈におけるValsalva洞形態を維持したまま、滑らかな大動脈形態を得るために工夫した再建術式を報告する。【新大動脈再建術式】サイズの大きな旧肺動脈前面をST junctionよりも末梢側で腹側が舌状になるようにトリミングを行う。それぞれの冠動脈のfacing sinusにJ字に切り込んでTrap door変法として、kinkingが生じないように冠動脈移植をする。サイズの小さな上行大動脈腹側に切れ込みを入れて、舌状部分をはめ込むような形で吻合をして、新大動脈を再建する。【症例1】生後4カ月の女児。両大血管右室起始(TGA type, Subpulmonary VSD)、両側末梢肺動脈狭窄、冠動脈形態Shahar 1型の診断。大動脈径/肺動脈径比:0.7。心内血流路作成および大血管転換手術(Lecompte法)を行った。【症例2】生後7日の女児。両大血管右室起始(TGA type, Subpulmonary VSD)、大動脈縮窄、冠動脈形態Shahar 1型の診断。大動脈径/肺動脈径比:0.46。心内血流路作成および大血管転換手術(Lecompte法)、大動脈弓修復を行った。【症例3】生後5日の男児。両大血管右室起始(TGA type, Subpulmonary VSD)、大動脈弓離断(type A)、冠動脈形態Shaher 3c型の診断。大動脈径/肺動脈径比:0.5。心内血流路作成および大血管転換手術(Lecompte法)、大動脈弓修復を行った。【結果】いずれの症例においても大動脈弁上狭窄や大動脈弁逆流として有意なものは認めなかった。【結語】送血管の位置を考慮する必要はあるものの、術後の大動脈弁上狭窄や大動脈弁逆流を回避しうる有用な術式と考えられた。造影CTからの血流解析データを加えて報告する。