[I-YB05-4] 乳児特発性僧帽弁腱索断裂に対する外科治療の遠隔成績
キーワード:特発性僧帽弁腱索断裂, 人工腱索, 僧帽弁形成術
目的)乳児期特発性僧帽弁腱索断裂は発症後重篤な急性心不全に陥り多くの場合早急な外科治療を必要とする。外科治療の選択肢として人工腱索を用いた腱索再建術は比較的良好であるという報告がある一方、成長著しい乳児期からの長期予後に向けてその妥当性や耐久性において議論の余地を残す。そこで本疾患に対して僧帽弁形成術を行なった例の遠隔期成績を検証した。方法)2005年12月から2012年6月までに僧帽弁形成術(MVP)を施行した特発性僧帽弁腱索断裂8例を対象とした。手術時平均年齢5か月(1-7)、平均体重6.9kg(4.1-9.1)全例にePTFE糸を用いた腱索再建術とKay-Reed法による弁輪縫縮術を併施した。術後評価として心エコーによりMR(0-4),僧帽弁流入速度, LVDd, 僧房弁輪径, BNP, Geometryの変化の指標として人工腱索を含んだ乳頭筋長(D3)の変化を検討した。結果)平均観察期間は12.5年(8-15)でありBSAは手術時から観察期間中平均0.33から1.28m2と増加した。病変部は前尖のみ5, 後尖2, 前後尖1例であった。人工腱索再建数は平均1.9対であった。全例生存しMVP後の再手術回避率は100%であった。 MR grade は術前3.9±0.4度,退院時2.4±0.9,遠隔期0.8±0.6で有意に改善し、遠隔期にかけて逆流が改善する傾向を認めた。僧帽弁流入速度(m/s)も退院時1.3±0.3, 3年1.4±0.2遠隔期1.5±0.3と有意な進行を認めなかったが高めで推移する症例が認められた。LVDd(% of N)は術前122±24,退院時109±20, 遠隔期96±09で有意な変化は認めず術後弁輪径の変化も同様であった。D3はBSAと有意な相関(r2=0.6)を示した。遠隔期BNP値は16.0±14.2 pg/dl, 学校管理指導区分では大動脈弁置換を10歳時に施行した1症例(D区分)を除き他はE区分とされた。結語)人工腱索,弁輪縫縮によるMVPの学童、思春期までの弁機能、Geometryを含めた遠隔成績は良好であり成長を考慮に入れなければならない小児においても有用な術式であると考えられた。