[I-YB05-6] 患者のライフスパンを見据えた乳児特発性僧帽弁腱索断裂の治療戦略
キーワード:ライフスパン, 弁形成術, 予後
【背景と目的】特発性僧帽弁腱索断裂(AMRI)では早期の診断・治療介入の重要性が指摘されているが,外科手術のタイミングや手術法などは未だ十分には確立されていない.自験例を通じて,急性期の救命のみならずライフスパンを見据えた治療戦略について検討する.
【対象】月齢3~9ヵ月.男1例,女3例.体重6.8~7.7kg.全例,感冒症状にひき続き急激な呼吸・循環不全に陥り入院した.胸部 X線写真でCTR 0.55~0.74,肺うっ血を認めた.心エコー検査で弁尖逸脱を伴う重度の僧帽弁逆流(MR)を認め,AMRIと診断した.積極的な内科治療で循環動態の安定をはかり,管理が困難で外科手術を必要とする場合にも弁置換術(MVR)は可及的に回避する方針で治療した.
【結果】1例は内科治療で心不全が軽快し19日後にいったん退院したが,感冒を契機に再度増悪し,再入院後36日で外科手術が施行された.他の3例は各々入院当日,入院後6日,13日に手術(1例は他院)を受けた.全例弁形成術(Kay法,弁尖augmentation,二尖弁化など)±人工腱索による腱索再建が施行され,MVR施行例はなかった.術中所見では断裂腱索は1本から後尖全てに及ぶ例まで様々で,3例で感染性心内膜炎の関連が示唆された.術後観察期間は2~12年.直近の心エコー検査でMR微少の1例は無投薬,軽度の2例はACEIの内服,重度の1例は利尿薬,ACEI,Carvedilolの内服でMRの増悪を抑え成長をはかっている.
【考察と結論】腱索断裂が複数で弁尖逸脱が広範囲の場合,MVRが施行されることが多いが,成長に伴う人工弁入れ替え術が不可避である.乳児期のMVRを回避して形成術を行い,降圧薬や利尿薬を用いた積極的な内科治療で遺残MRの増悪を抑えて成長をはかる治療方針では,将来MVRを含む再手術が見込まれる症例でも,再々手術を回避できる可能性がある.AMRIでは,発症後数十年に及ぶライフスパンを見据えて治療戦略を立て,小児期の治療・管理を行うことが重要である.
【対象】月齢3~9ヵ月.男1例,女3例.体重6.8~7.7kg.全例,感冒症状にひき続き急激な呼吸・循環不全に陥り入院した.胸部 X線写真でCTR 0.55~0.74,肺うっ血を認めた.心エコー検査で弁尖逸脱を伴う重度の僧帽弁逆流(MR)を認め,AMRIと診断した.積極的な内科治療で循環動態の安定をはかり,管理が困難で外科手術を必要とする場合にも弁置換術(MVR)は可及的に回避する方針で治療した.
【結果】1例は内科治療で心不全が軽快し19日後にいったん退院したが,感冒を契機に再度増悪し,再入院後36日で外科手術が施行された.他の3例は各々入院当日,入院後6日,13日に手術(1例は他院)を受けた.全例弁形成術(Kay法,弁尖augmentation,二尖弁化など)±人工腱索による腱索再建が施行され,MVR施行例はなかった.術中所見では断裂腱索は1本から後尖全てに及ぶ例まで様々で,3例で感染性心内膜炎の関連が示唆された.術後観察期間は2~12年.直近の心エコー検査でMR微少の1例は無投薬,軽度の2例はACEIの内服,重度の1例は利尿薬,ACEI,Carvedilolの内服でMRの増悪を抑え成長をはかっている.
【考察と結論】腱索断裂が複数で弁尖逸脱が広範囲の場合,MVRが施行されることが多いが,成長に伴う人工弁入れ替え術が不可避である.乳児期のMVRを回避して形成術を行い,降圧薬や利尿薬を用いた積極的な内科治療で遺残MRの増悪を抑えて成長をはかる治療方針では,将来MVRを含む再手術が見込まれる症例でも,再々手術を回避できる可能性がある.AMRIでは,発症後数十年に及ぶライフスパンを見据えて治療戦略を立て,小児期の治療・管理を行うことが重要である.