第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

パネルディスカッション

パネルディスカッション06(III-PD06)
Fontan循環のUp-to-date:新たな病態を探る

2021年7月11日(日) 10:00 〜 12:10 Track6 (現地会場)

座長:大内 秀雄(国立循環器病センター 小児科)
座長:中野 俊秀(福岡市立こども病院心臓血管外科)
コメンテーター: David J. Goldberg(Perelman School of Medicine at the University of Pennsylvania/Children’s Hospital of Philadelphia, USA)

[III-PD06-6] Fontan循環では肺血管拡張薬による体肺短絡血流増大が最大酸素摂取量増加の一因かもしれない

岩屋 悠生1, 石川 友一1, 倉岡 彩子1, 兒玉 祥彦1, 漢 伸彦2, 中村 真1, 佐川 浩一1 (1.福岡市立こども病院 循環器科, 2.福岡市立こども病院 胎児循環器科)

キーワード:肺血管拡張薬, Fontan, 体肺側副動脈

【背景】Fontan(F)循環への肺血管拡張薬(PVD)使用は有効性が報告され、Wuwanらのmeta-analysis(2019Pulm circ)に代表されるように最大酸素摂取量(pVO2)増大から運動耐用能を改善することは間違いなさそうである。しかしこの血行動態的機序は必ずしも明らかではない。我々はCMRを用いて体肺短絡血流(SPCF)に着目しF循環でのPVDの効果を検証した。
【方法】対象は5歳以上のF術後症例で2017年7月以降にCMRを2回以上施行し、間に外科的介入のなかった15例。内服群(P群)7例(初回CMR時11±3.6歳)および非内服群(C群)8例(同14±3.8歳)に分け、CMRおよびCPX指標を比較した。SPCF流量は2通りの方法で計測した(SPCF1=大動脈血流量-(上大静脈+下大静脈血流量(Qs))、SPCF2=左右肺静脈血流量(Qp)-左右肺動脈血流量)。肺血流量(Qp)は左右肺静脈血流量の和とし、SPCF1と2それぞれが大動脈血流(Ao)とQpに占める割合を算出・比較した。
【結果】初回有意差なしだが2回目でSPCF1(0.82 vs 0.38 L/min/m2)およびSPCF2(0.82 vs 0.33 L/min/m2), SPCF2/Ao(23 vs 12%), SPCF2/Qp(23 vs 13%), Qp/Qs(1.29 vs 1.13)はP群で有意に高値であった。SPCF関連指標の変化はSPCF2(+0.25 vs -0.06 L/min/m2 p=0.13)等P群で増加、C群で不変ないし減少傾向を示した。P群を初回CMR後PVD開始3例と長期内服4例に分け、変化を比較するとQp/Qs(-0.04 vs +0.17 p=0.03), SPCF2/Ao(-2 vs +12% p=0.03)と長期内服4例で増加が顕著であった。2回目CMR時点での年齢/性別補正pVO2(75 vs 54 % ofN), pVO2/peak HR(0.20 vs 0.13ml/kg/min/stroke)はP群で有意に高く, pVO2/peakHRはQpと強い相関を示した(R2=0.60)。
【考察】PVDはSPCFを増加させ、運動時に並列循環成分として単位時間あたりの左房への還流を増大させることで1回拍出量増加に寄与していると推測される。
【結論】PVDはF循環においてSPCFを増大せしめ運動耐用能を改善させている可能性がある。