[III-SY10-1] 小児左心補助人工心臓長期の問題点
キーワード:EXCOR, 合併症, 感染
小児心臓移植は世界では年間600-700例行われており、1歳以下でも100例前後行われている。しかし本邦では1昨年12例、昨年はコロナ禍の影響もあり5例に行われたのみである。一方小児心臓移植登録患者は増加しており、現時点で安全に移植に到達するためにはBerlin Heart EXCORを用いた補助循環以外に方法はない。元来月単位の補助を目的としたEXCORは欧米では4か月程度の補助の後は移植あるいは死亡にほぼ二分されるが、本邦では84症例で平均装着期間366日である。欧米よりはるかに良好な成績であるが、それは移植が無いからである。良好と言ってもこの長期にわたる補助では必ず合併症発症する。当施設において長期合併症の一番は感染症、二番は成長による問題(逸脱、脱血不良)などであった。長期補助で考えられる脳合併症の発生は急性期にはあるものの長期安定期での発生はほとんど認めなかった。循環以外の問題では平均装着月齢10.8カ月と幼い症例群で長期の入院や移動制限などにより、臨床心理士の介入を行っているにもかかわらず精神運動発達の正常な過程が妨げられ学童では社会性も阻害される。入院を継続せざるを得ないことで本人のみならず家族にも大きな負担がかかっている。社会問題としては長期補助で新たな患者へのDeviceの不足が全国的に起こっており、これは保険制度により平等に医療提供するという観点から早急に対策が必要である。本発表では我々の対応策を姑息的ではあるが紹介する。移植数の増加以外の解決策としては小児用埋め込み型人工心臓の開発であるが、一時期待された小児用 Jarvikの開発は進んでおらず、HVADは市場から撤退したため退院できるDeviceが手に入る目途は経っていない。本邦の移植数のレベルが欧米並みになることが何よりも急務である。