[III-YB07-3] 小児の院内発症ECPRの経験
キーワード:ECPR, ECMO, 院内発症
(背景)心疾患を有する患者が急変した際には通常の心肺蘇生では回復する見込みは低く、速やかに体外循環を使用したECPRへの移行が必要である。近年はその有用性が報告されているものの、十分な体制を整えるのは難しい。近年の当院で行なった院内発症例に対するECPR症例について検討し報告する。(方法)2013年5月から2020年12月までの7年8ヶ月の間に、院内で発生した18歳未満のCPR症例に対しECMOを導入した21名23症例を対象とし、患者の背景や発症時の状況、蘇生開始からECMO開始までの時間について検討した。(結果)患者の平均年齢は2.0±3.1歳、平均体重は7.9±7.2 kgであり、全員心疾患を有し入院中であった。心臓手術の既往がある症例が19名であり、心臓の術後で入院中の患者が15名であった。根治術が終了している患者は6名であり、姑息術の状態が13名であった。急変の発生場所はICUが18例、病棟が5例。心臓手術後患者15例のうち、11例(73%)が術後1週間以内に発生していた。人の少ない時間帯である深夜0時から朝7時の間に発生した症例は8例であった心臓マッサージを開始してからECMOを開始するまでの時間は、平均44±17 (16-82)分であり、ECMOを使用した時間は147±105 (15-482)時間であった。ECMOから離脱できた症例は23例中19例(83%)であり、そのうち10名が自宅へ退院できた。残念ながら退院できた10名のうち7名に脳障害を合併していた。挿管の有無や急変発生場所などではCPR時間に有意差は見られなかったが、深夜帯に発生した症例は有意にCPR時間が長い傾向がみられた。一方CPR時間によりECMOの離脱率や退院の有無に差はみられなかった。(結語)ECMOからの離脱率は比較的高い水準にあると思われるが、院内発症の心肺停止例であってもECMOを開始するまでに時間がかかっていることや、ECMOに伴う合併症も多く、改善する必要があると考えられた。