[OR3-5] 多発性の体肺動脈側副血管を合併するKCNT1遺伝子変異による難治性てんかんの1例
キーワード:体肺動脈側副血管, KCNT1遺伝子, 難治性てんかん
【背景】ナトリウム依存性カリウムチャネルをコードするKCNT1の機能獲得変異は、遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん(MMPSI)、常染色体優性夜間前頭葉てんかん、早期発症てんかん性脳症の他のタイプと関連していることが知られている。KCNT1変異を伴うてんかん性脳症に多発性の体肺動脈側副血管(APCAs)を合併することがあり、我々の施設を含め2017年に本邦の3例を報告した。今回、同様のフェノタイプを呈する症例を経験したが報告は少ない。【症例】症例は1歳男児。生後から、哺乳不良、傾眠傾向、無呼吸を認め、新生児けいれんとして抗けいれん薬による加療を開始されるも難治な経過であった。その後の精査によりMMPSIと診断された。発作のコントロールは困難であり、最重度の精神運動発達遅滞を認めている。てんかん外科的治療の検討中に、精査入院中に大量の吐血が出現し輸血を要し、その後の精査で両鎖骨下動脈を中心に多数のAPCAsを認め喀血と判断された。その後は大きな出血のイベントなく経過している。MMPSIの診断からエキソーム解析の結果、KCNT1変異が同定された。【結語】KCNT1遺伝子変異をもつ難治性てんかんに多数のAPCAsを認める1例を経験した。KCNT1変異とAPCAsの発生との間の直接的な関連性およびメカニズムはいまだ検証されていないものの、症例報告レベルでは知見が集積してきている。今回、KCNT1変異の詳細な機能解析は行えていないもののこれまでの変異部位との関連性について考察し、KCNT1変異を有する患者における心血管スクリーニングの重要性を提示したい。今後、同様の症例のさらなる研究は、KCNT1変異におけるAPCAsの発生メカニズムを解明し、関連する喀血や心不全に対する効果的な治療法の選択肢につながるものと考えられる。