[P27-7] 若年発症し進行性の心不全と心室頻拍を呈した左室緻密化障害のDTNA変異例
キーワード:心筋緻密化障害, DTNA遺伝子, ジストロフィン糖蛋白複合
【背景】左室緻密化障害(LVNC)の予後は重篤な心不全を呈する例から無症候例まで様々であるが、年長児以降で発症するLVNCは比較的予後が良いとされる。また、DTNA遺伝子は、LVNCの原因遺伝子として報告されているが、その表現型や予後に関しては明らかではない。若年でLVNCと診断し、持続性心室頻拍(SVT)と進行性の心不全を呈した自験例を通してDTNA遺伝子変異例の表現型と予後について考察した。【症例】突然死の家族歴はなし。12歳時に学校検診で心電図異常を指摘され、近医を受診したが、心エコーに異常はなかった。16歳時に運動中の意識消失をきたし、左室駆出率(LVEF)=41%と心収縮能低下を認め、LVNCと診断された。17歳時にはLVEF=30%となり、非持続性心室頻拍(NSVT)を伴った。心不全に対してACE阻害薬、NSVTに対してβ遮断薬を開始されたが、心機能は改善しなかった。20歳時にSVTが出現し、植え込み型除細動器の植え込み術を施行され、アミオダロン、β遮断薬内服で管理された。心不全に対しては左室補助人工心臓植込み術を施行された。遺伝学的検査から、DTNAのヘテロ接合体ミスセンス変異(p.Arg63Gln)が検出された。【考察】DTNAがコードするα-dystrobrevinは複数の蛋白とジストロフィン糖蛋白複合(DGC)を構成するが、近年DGCの機能異常としてコネキシンの発現を介した不整脈の発症機序や、シグナル伝達を介したLVNCの発症機序が報告されている。過去には2つのミスセンス変異と1つのナンセンス変異(p.N49S、p.P121L、p.Q201X)が報告されているが、これらの変異を有する症例には若年で心不全や不整脈を伴う例がみられた。【結論】DTNA遺伝子変異を伴うLVNCでは若年発症でも進行性の心不全や不整脈の出現を伴い重篤な経過を呈するものが存在する。