[P28-2] インフルエンザB型感染により特異的に房室伝導障害をきたし、心臓ペースメーカー植込みに至った急性心筋炎の1例
キーワード:インフルエンザ, 急性心筋炎, 房室ブロック
【背景】小児急性心筋炎の臨床像は多岐に渡るが、刺激伝導系の異常を呈することもある。今回我々はインフルエンザB型(FluB)感染症を契機に完全房室ブロックをきたし、心臓ペースメーカー植込み(PMI)を要した急性心筋炎の幼児症例を経験したので報告する。【症例】4歳男児、家族歴、既往歴に特記事項なし。発熱があり、翌日近医にてFluB感染症と診断され、その際聴診で徐脈傾向であったため当院紹介となった。第4病日の心電図にST-TやR波高値に異常は認めなかったが、完全房室ブロック(III°AVB)を呈し、胸部X線では心胸郭比58%と心拡大があり、血液検査では心筋逸脱酵素とBNP上昇を認めた。一方で、心臓超音波検査では左室駆出率(EF)低下は認めなかった。Isoproterenolとprednisoloneの投与を開始し、第8病日の心臓MRI検査では異常信号域を認めなかったが、第11病日時点でも房室伝導障害は改善せず、第13病日に心臓電気生理学検査および心筋生検を施行し、AHブロックと心筋炎に合致した病理所見が得られ、FluB感染症による急性心筋炎に伴うIII°AVBと診断した。Isoproterenol中止後も循環動態は保たれていたが、徐脈による低心拍出による肺うっ血所見があり、PMIの適応と判断し、第31病日にPMIを施行した。術後経過は良好であり第39病日に退院とした。【考察】小児急性心筋炎における心電図変化はほぼ全症例に認め、房室伝導障害も散見されるが多くは2週間以内に自然回復する。本症例では房室伝導障害は非可逆的でPMIを要した。過去の報告と比較するとEF低下や心筋逸脱酵素上昇は軽度であり、炎症が刺激伝導系に限局していた可能性があると考えられた。【結語】小児急性心筋炎治療に確立したものはないが、心機能障害が顕著でなくても刺激伝導系障害が進行することもあり、管理上留意すべきである。