[P30-3] 小児におけるアントラサイクリン系薬剤を用いた化学療法が収縮機能に与える影響
キーワード:アントラサイクリン, 化学療法, 心機能低下
【背景】小児がん治療の進歩により5年生存率が向上したが、晩期合併症としてがん治療関連心血管疾患が重要な課題となっている。【目的】アントラサイクリン系薬剤を使用した小児がん患者の心収縮機能の変化を明らかにする【対象/方法】アントラサイクリン系薬剤を用いた化学療法終了後1年以上を経過した患者10例(年齢4-31才、中央値14.5才、男6名)をA群、学校検診等で受診し正常あるいは軽微な心疾患と診断された患者12例(年齢1-17才、中央値10才、男10名)を対照群とし、心エコー検査を用いLVEF、 LV-GLS、僧帽弁逆流の有無、血中BNP値(A群のみ)を検討した。【結果】A群においてアントラサイクリンの使用量はドキソルビシン換算で301.19±126.65mg/ m2であった。また心エコー検査時の血中BNPは平均7.77 ±3.34 pg/mlと上昇を認めず、明らかな心不全症状を呈している患者はなかった。両群において中等度以上の僧房弁逆流は認めず、心内奇形の合併を認めなかった。LVEF、LV-GLSの平均はA 群でそれぞれ63.43%、 -20.98%、対照群で70.6%,、-25.7%であり、LVEF,、LV-GLSともにA群において低い傾向にあった。A群において特にLV-GLS>-20の低下を示したのは5例あり、アントラサイクリン系薬剤の使用量は平均389.6mg/m2である一方、LV-GLS<-20と正常値を示した5例の薬剤使用量は平均209mg/m2であった。【考察/まとめ】治療後1年以上経過した、アントラサイクリン系薬剤を使用した小児がん患者の心収縮能においてLVEF、LV-GLSの平均値は正常であったが、対照群と比較すると低値であった。若年者の心収縮能が成人より良好である為と考えられ、小児がん患者の心機能低下はマスクされやすく慎重なフォローアップが必要と考える。