第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

染色体異常・遺伝子異常

デジタルオーラルII(P4)
染色体異常・遺伝子異常 1

指定討論者:山岸 敬幸(慶應義塾大学医学部 小児科)
指定討論者:金 基成(神奈川県立こども医療センター)

[P4-3] Williams症候群に合併した単一冠動脈の急速進行性冠動脈口狭窄

江崎 大起, 宗内 淳, 渡辺 まみ江, 杉谷 雄一郎, 土井 大人, 古田 貴士, 小林 優, 落合 由恵, 城尾 邦彦 (JCHO九州病院)

キーワード:Williams症候群, 単一冠動脈, ECMO

【はじめに】Williams症候群(WS)において、ELN遺伝子を含む7番染色体微小欠失から生じる大動脈弁上部狭窄は冠動脈口狭窄へと進展し、年間1/1,000人の頻度で突然死すると考えられている。【症例】1歳5か月男児。体重増加不良で経過観察中、不機嫌と嘔吐で救急センターを受診し胃腸炎の診断で前医入院。多呼吸、頻脈、左室駆出率(LVEF)低下(30%)から心筋炎疑いのため当院搬送。来院時、心拍数180回/分、SpO2 92%、呼吸数 50回/分、胸部X線写真CTR 49%。CK上昇はなかったが心電図V1-V3で異常Q波、胸部誘導の広範なST変化から冠動脈虚血を疑い緊急冠動脈造影を実施。左単一冠動脈であったが4Fr JLカテーテル挿入可能で左冠動脈口狭窄は指摘できなかった。ICU入室後、人工呼吸管理、循環作動薬、鎮静により管理を行い一時的な血圧安定をみたが処置中心停止となり、約40分間の心肺蘇生後、緊急体外式膜型人工肺(ECMO)を導入。入院4日目にLVEF回復からECMO離脱。また特異的顔貌からWSと診断し、染色体FISH検査でdel(7)(q11.23)と診断。ICU退室後、覚醒・啼泣時に心電図で一過性ST低下、心拡大進行、LVEF 20%再増悪があり、入院35日目に再冠動脈造影を施行。左冠動脈起始部が狭小しほぼ途絶していた。大動脈弁上部狭窄進行は認めなかった。入院38日目に左冠動脈起始部拡大術を施行。ST変化消失、LVEF改善(50%)、Tc99m心筋シンチで還流低下なし。【考察】初回冠動脈造影では冠動脈口の決定的狭窄は指摘できなかったが、2回目冠動脈造影で危機的冠動脈口狭窄への進行があり、約1か月の経過で有意な大動脈弁上部狭窄を伴わず急速に冠動脈口狭窄を生じた。WSにおいて心電図虚血変化が見られた場合は躊躇なく冠動脈造影を行うことが薦められる。