[P41-4] 重症慢性肺疾患に肺高血圧症を合併し、NO吸入とsildenafil導入にて改善を認めた一例
Keywords:肺高血圧症, 慢性肺疾患, PH crisis
【背景】早産児の救命率の上昇に伴い、慢性肺疾患(CLD)の罹患率も上昇している。CLDに肺高血圧症(PH)を合併したCLD-PHの報告も増加しており、同症は予後不良とされ、有効な治療法も確立されていない。【症例】在胎24週3日、出生体重852gで他院にて出生した男児。生後3分で気管挿管され人工呼吸器管理を開始。動脈管開存症に対して日齢39で結紮術を施行。術後に気胸を合併した事や、経過中に中咽頭狭窄・軟化症を認めたことから日齢121まで人工呼吸器管理を継続された。胸部CTで著明な索状陰影を認め、重症CLDと診断された。抜管以降はCPAPで管理され、日齢134に退院調整目的に当院へ転院した。その際の心エコーでは、明らかなPH所見は見られなかった。日齢170に、啼泣時に突発的にチアノーゼが出現し、純酸素投与で改善を得た。血液検査でNT-proBNP >70000pg/mlと著明高値であり、胸部Xpで心陰影拡大を認めた。心電図では右室肥大所見あり、心エコーで著明な右心系の拡大、severe TR、mild PRを認めた。CLD-PHに伴うPH crisisと考え、sildenafilを0.5mg/kgから開始して3mg/kgまで漸増し、再挿管してNO吸入を20ppmで開始した。以降呼吸安定して、心エコーでPHは改善傾向であり、NT-proBNP 316pg/mlまで低下したためNOは緩徐に漸減して終了した。日齢189に抜管してCPAPを開始し、以降再増悪なし。sildenafil内服を継続しつつ、退院に向けて在宅酸素療法(HOT)の導入を検討している。【考察】本症例は重症CLDを背景としたPHを呈し、NO吸入とsildenafil内服の併用で加療し、すみやかに改善を得た。啼泣等で容易にPH crisisに至る症例であり、内服とHOTでの管理で慎重に経過観察する方針である。現在CLD-PHについて確立された治療方針はないが、NO吸入や肺血管拡張薬の有効性を示す報告が増えていて、本症例もそれに矛盾しない結果となった。CLD-PHは生命予後に大きく関与する疾患であり、治療の早期確立が望まれる。